大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【80話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

80話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 聖女の死

「お嬢様、起きる時間です。」

自分が眠っていたことさえ気づかなかったエスターは、起こしに来たドロシーを見て驚いて飛び起きた。

侍女たちの助けを借りて急いで身支度を整え、1階へと降りていった。

まだ食事の時間前だったが、ドフィンに会うためだ。

昨夜、ドフィンが何かしらの知らせを伝えに来たのではないかと、心臓をドキドキさせながら部屋の前に到着した。

しかし、扉は閉ざされており、中からは何の気配も感じられなかった。

「いらっしゃらないのですか?」

戸惑うエスターが立ち尽くしていると、ちょうど廊下を通りかかったデルバートが近づいてきた。

「殿下をお探しですか?」

「はい。今どちらにいらっしゃいますか?」

デルバートは穏やかに微笑みながらエスターと目線を合わせる。

「少し前に急な知らせを受けて出かけられました。戻られるや否や再び外出することになり、申し訳ないと仰っていましたよ。」

夜明け近くに出て行く音を耳にしていたので、エスターが少し眠っている間に出かけたらしい。

エスターは緊張した面持ちでデルバートと視線を交わした。

「急な知らせというのは、もしかして神殿と関係があるのでしょうか?」

「どうしてそれをご存じですか? ええ、そうです。昨夜、聖女様が亡くなられたとのことです。何とも悲しい出来事で・・・。」

デルバートが何か言い続けていたが、その内容は耳に入らず、ただ遠くで響いているようにしか感じられなかった。

『やっぱり、そうなる気がしてた。』

エスターは足がふらつき、倒れそうになるのを壁に手をついて必死に支えた。

「お嬢様!大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。」

「顔色がよくないですが・・・食堂までお連れしましょうか?」

「いいえ。今日は朝食は控えます。ちょっと胃の調子が良くないので。」

突然青ざめたエスターの様子を見て、デルバートはひどく心配したが、エスターは彼の助けを断り、振り返って部屋を出た。

広い庭園を歩きながら、噴水の前で足を止めた。

もう歩く力も尽き、そばに腰を下ろした。

エスターが邸宅を出る際から一歩後ろを歩いていたビクターが、もう見過ごせないとばかりに尋ねた。

「何かお困りですか?私にできることがあればおっしゃってください。」

「ごめんなさい。一人にしてほしいの。」

エスターは今、他の人に気を使う余裕はなかった。

「せめてこれを。」

1月の冷たい風が吹く中、薄着で外に出たエスターを見かねて、ビクターは自分のジャケットを脱ぎ、彼女の手に渡して立ち去った。

『どうしてこんなことになっているんだ。』

普段とは違うエスターの様子に不安を覚えたが、彼女の願いを尊重するようにという命令を思い出し、彼は遠く離れるしかなかった。

一人残されたエスターは、ぼんやりと空を見上げていた。

光が目に差し込み、思わず目を細める。

「・・・結局戻られたんだ。」

それがいつか訪れることは分かっていた。

たとえ1年遅れたとしても、それは感謝すべきことであった。

しかし、なぜこんなにも胸が締め付けられるのだろう。

毎回再会するたびに同じ感情が蘇る。

いつも監獄に閉じ込められるのではないかと心配していた彼女が、ようやく解放されたような気分だった。

「聖女様・・・安らかにお眠りになったのでしょうか。」

真心から彼女を大切に思う人が一人もいないまま、孤独にこの世を去ったセスピアを思うと、心が重くなった。

まずはセスピアの安息を祈ることが最優先だと思い、彼女のために目を閉じて祈りを捧げた。

その間、朝食を取ろうと食堂に降りてきたジュディが、空っぽの食堂を見て眉をひそめた。

「父上もエスターもまだ?」

「ああ、ドフィン様は聖女様から急ぎの用があり、神殿に向かわれました。お嬢様は朝食を取らないとおっしゃっています。」

「エスターが?どうして?」

エスターはこの家に戻ってから一度も食事を抜いたことがなかった。

それなのに彼女が朝食を食べないとは、いったい何があったのか。

ジュディの表情が険しくなった。

「分かりません。聖女様が亡くなったという知らせを聞いて、顔が真っ青になってしまったようですが・・・」

「何だって? 聖女様が亡くなったの?」

ジュディはデルバートの言葉を最後まで聞くこともなく、急いで外に飛び出した。

エスターを探すために。

途中、使用人たちからエスターが庭にいると聞き、すぐに噴水のそばまで駆けつけた。

力なく噴水のそばに座っているエスターを見つけると、ジュディは大声で叫んだ。

「エスター!」

「お兄様?」

祈りを終えたエスターがゆっくりと目を開け、彼を見上げた。

ジュディはエスターの前に立ち、涙をこらえた表情で続けた。

「あなた、神殿に行くつもりじゃないでしょうね?」

「神殿ですか?ああ・・・お兄様も聖女様のことを聞いたんですね。そうですか。でも、そんなことは絶対にありませんよ。」

セスフィアの訃報を聞いた瞬間からずっと気がかりだったジュディが、ほっと安堵のため息をついた。

「よかった。今はもう聖女様は君しかいない。君が神殿に行くなんて言い出さないか心配だったんだ。」

ジュディはエスターから確かめの言葉をもらった後も、絶対に彼女を放さないかのように固く手を握りしめた。

「なんでそんなに心配するんですか。私がいる場所はここでしかないのに。」

手を通じて伝わるジュディの本心を感じ、エスターはにっこり微笑んだ。

「ところで、どうして朝ごはんを食べなかったんだ?みんなすごく心配してるよ。僕もそうだけど。」

セスフィアが亡くなった話を聞いて、世界が崩れてしまったかのようにエスターは思い悩んでいた。

しかし、エスターが朝食を食べないことを大きく心配するジュディの言葉を聞いているうちに、ぷっと笑みがこぼれる。

「お兄さん、それってそんなに大事なんですか?」

「もちろんだ。毎日を始める朝食より大事なものがあるか?食事が一番重要だよ。それに君はご飯を食べる時間が一番好きじゃないか?」

ジュディの言葉には一点の間違いもなかった。

それがあまりにも正しい指摘だったので、エスターも思わず納得してしまう。

既に以前とは多くのことが変わっているので、大げさに落ち込む必要が全くないという事実。

エスターのそばには、このように頼もしい兄、父、そして縁を結ぶ人たちがいる。

何より大切なのは今の日常だ。

朝食を食べ、大切な人と会話を交わし、それを楽しむこと。

後のことを心配するあまり、この幸せを見失いそうになった自分が馬鹿みたいで、手のひらで自分の頬を軽く叩いた。

そんなに強く叩いていないのに、ジュディは驚いてエスターの頬を押さえた。

「ちょっと、どうしたの?大事な顔に傷でもついたらどうするのよ!どれ、見せて。大丈夫なんでしょう?」

まるで自分が叩いたかのように慌てふためくジュディを見て、エスターは明るく笑った。

「もう気が晴れましたよ。さあ、朝ごはんを食べに行きましょう。」

「えっ、朝ごはん食べるの?いい決断だね!」

突然雰囲気が変わったエスターを見てジュディは不思議に思ったが、明るくなった様子に心を緩め、一緒に笑った。

エスターは後ろでずっと自分を心配してくれていたヴィクターにも目で微笑みかけ、感謝の笑みを浮かべた。

一瞬弱気になっていた心は、今まで以上に穏やかになっていた。

 



 

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