こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

93話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 村の異変②
翌晩もエドワードは容赦なく暗殺の脅威にさらされた。
彼はそれを日常のことのように、冷静に対処していたが、しばらく平和だった騎士団は、夜明け前に全員が召集された後、報告を受けてパニックに陥った。
最近、ここでは立て続けに暗殺者が現れるという異例の事態が起こっていた。
騎士たちの視点からすれば、前夜の巡回中にしっかり警戒していたにもかかわらず、まったく気配を察知できなかったことも衝撃だ。
エドワードは暗殺者の気配を察知すると、すぐに外へ出て素早く片付けたようだった。
「何か問題でも?」
「……我々が気付けなかったのが問題かと。」
マクシオンの声は静かに低くなる。
エドワードは不審げな表情で答えた。
「そうじゃない。俺が処理できるから、お前たちを起こさなかっただけだ。」
「……。」
「他に問題でも?」
マクシオンは、エドワードの言葉が本心であることを理解した。
二十歳の彼は、皇帝が亡くなった日に、皇城から逃げるように脱出する過程で、彼を守ろうとして命を落とした者たちに対して、計り知れない負い目を感じていた。
さらに、ようやく形をなした彼の私設騎士団も、当時の混乱時には実力がまちまちだった。
かつての彼らは、騎士団と名乗るには心許ないほど、彼の庇護を受ける側の存在でしかなかったのだから。
エドワードの記憶は、彼らが最も無力だったあの瞬間で止まっていた。
だが、彼が淡々と語ることは、二十歳のエドワードにとっては当然の日常の一部だった。
「……ご休息を。」
「今は真昼だけど?」
「徹夜されたのでは?今夜もまた徹夜なさるのでしょう。」
「………」
「もし私たちでは不十分なら、ルイーゼに護衛を頼むようにお願いしましょう。ですから、ご休息ください。」
「不十分だったのではなく、起こす必要がなかったのさ。それに記憶の欠落についても調査しなければならない。」
「それは私たちがやります。ですが、それでもお休みください。」
マクシオンは冷静な表情でそう言った。
そんな彼をしばらくじっと見つめた後、エドワードはゆっくりと息を吐いた。
「……そうか、それならそうしよう。」
エドワードの許可が下りると、マクシオンはすぐにルイーゼの自室へと向かった。
・
・
・
朝食後、今日は何をしようかと考えていたルイーゼは、マクシオンの訪問を受けた。
「さっき隣の部屋から出てきたばかりじゃない? ついに私にも話すべきことができたの?」
「うん。当分の間、君がエドワード様の護衛を頼むよ。面倒かもしれないけど、できるだけ彼の睡眠時間を確保するように一緒にいてほしい。」
「私がエドワードの護衛を?いいけど……みんな忙しいのね。エドワードの護衛を私に任せるなんて。」
「……うん。」
「わかった。手伝うよ。」
ルイーゼははっきりと答えた。
しかし、彼女があっさりと頼みを引き受けたにもかかわらず、マクシオンの険しい表情が和らぐ様子はなかった。
「顔色が悪いね。もしかして昨夜のことが原因? 本当に何もなかったんでしょう?」
「……いや、違うよ。引き受けてくれてありがとう。」
力なく部屋を出ていくマクシオンの背中を、ルイーゼは目をぱちくりさせながら見送った。
・
・
・
コンコン。
エドワードの部屋の前に立ったルイーゼは、少し緊張した面持ちで扉をノックした。
護衛の立場として彼の部屋を訪れるのは当然のことだが、昨夜この部屋の同じベッドで眠ったという事実が、妙に意識された。
「落ち着こう。相手は連日暗殺の危険にさらされているんだから。暗殺の脅威にさらされている、精神年齢二十歳の男さ。」
扉が開くまでに、少し時間がかかった。
カチャリ。
鍵が回る音とともに扉が開くと、ナイトガウンを羽織り、髪から水滴がぽたぽたと落ちるエドワードが立っていた。
「いらっしゃいましたね。」
「……!」
ルイーゼの瞳孔が、槐の葉のように震えた。
エドワードは無表情のまま、ルイーゼが入ってこようとするのを見て、わずかに後ずさった。
ルイーゼが部屋の中へ入ると、彼は静かに扉を閉め、タオルを手に取ると、髪の水滴を拭き始めた。
「今ちょうど洗ってきたところです。」
「魔法で乾かさないんですか?」
「魔法を使わずに生活するのが習慣になっています。魔法使いであることを秘密にしているせいで。」
「ああ、そうでしたね。」
「新しい護衛がこんなに親しげなのは初めてですね。」
エドワードが微笑んだ。
ルイーゼはわずかに頬を赤らめると、咳払いを一つした。
「起きている間は、できるだけそばにいるようにと言われています。」
「監視レベルですね。」
「連日、そんなことが続いたのですから当然ですよね。」
「マクシオンはルイーゼをとても信頼しているようですね。未来の私がルイーゼに剣術を教わることになるのも、マクシオンの推薦だと言われていましたし。」
「まあ、そうですね。でも、信頼する相手だからといって、自分の内面をすべてさらけ出すタイプではないので、少し心配です。マクシオンは、わりと自分の問題を抱え込む性格で、他人に迷惑をかけるのを嫌うんですよ。」
「同感です。」
「今日のマクシオン、機嫌があまりよくなさそうでしたけど、何かありました?まるで気力を失ったように見えました。」
「……はい、そうですね。」
エドワードは軽く指で弾くようにしてルイーゼの髪に触れた。
何度見ても不思議な光景に、ルイーゼは彼の髪をじっと見つめた。
「私の過ちだとはわかっていますが、修正するつもりはありません。」
彼の堂々とした告白に、ルイーゼは目を大きく見開いた。
「エドワードが間違っているって? どういうこと?」
「簡単に言えば……」
エドワードは複雑な表情を浮かべながらしばらく考え、ゆっくりと言葉を続けた。
「過保護な親の気持ちに近いかもしれませんね。」
「過保護な……親?」
「ええ。もうこれ以上、大切な人が一本の髪すら失わないようにしたいだけです。」
「……」
「この地で彼らの血が流れ、命を落とす姿をこれ以上見たくありません。だからこそ、私にできることは私が片付けるだけです。マクシオンは、私が部隊の実力を信用していないと考えているようですが。」
「それで、私に護衛を任せるというわけか。」
「はい。」
「剣を交えてみましたが、皆実力が際立っていました。剣術大会の本戦で出会った強者たちよりも優れた者も多かったです。あなたを守るには十分な人材です。彼らの実力を信じてください。」
ルイーゼの弁護に、エドワードはわずかに微笑んだ。
「その通りです。訓練を見るだけでも、明らかに変わったとわかりますね。7年間の血の滲む訓練の跡が見えます。」
「でしょう?」
「しかし、私にとって重要なのは彼らの実力ではありません。彼らは、私を守るためなら自らの命さえ惜しまない人たちなのです。」
「……そうですね。」
「私はそれが嫌いです。」
エドワードの表情が暗く曇った。
「彼らが当然のように私のために命を捨て、血を流すのが嫌なのです。私にとって彼らの命は私自身の命と同じくらい大切です。だからこそ、彼らが私を守ろうとするように、私もまた彼らを守りたいのです。」
「エリオットは覚えていないかもしれませんが、記憶を失う前に、あなたは私に”自分は優れた団長ではない”と言いました。それは正しいことですね。」
エドワードは不思議そうな眼差しでルイーゼを見つめた。
彼女は続けた。
「銀狼騎士団は、団員も団長もみな同じです。優れた団長も、優れた団員もいません。お互いがお互いに盲目的に尽くすだけ。結局、その中に”自分”なんていません。ただの愚か者たちです。」
ルイーゼの言葉に、エドワードは一瞬戸惑ったが、やがて小さく笑った。
「おっしゃる通りですね。」
彼は体をひねってベッドへと向かった。
「では、この愚か者はこれで寝かせていただきます。」
「まだ昼間ですが?」
「副官の命令です。徹夜をした上に、今夜も眠れない可能性が高いので、せめて昼寝でもしろと。」
「わかりました。私が見張っておきますね。もっとも、視線が気になって眠れるかどうかは分かりませんが。」
「それは困りますね。」
ベッドの端に腰掛けた彼は、ルイーゼをじっと見つめた。
「不思議なことに、ルイーゼさんが私の視界にいると、よく眠れるんですよね。」
「……そんなことがあるわけないでしょう。また冗談を言っているんですね。」
「本気ですよ。もしかして、香水の代わりに無色無臭の催眠香のようなものでも振りまいているのでは?」
「そんなわけないでしょう。」
「やはり、そうですね。」
エドワードは素早く柔らかい布団の中へ潜り込んだ。
彼は目を閉じた。
「ルイーゼさん。」
「寝ないでまた何ですか。」
「やはり、私の予想は正しかったですね。」
「予想?」
しっとりとした黒いまつげがわずかに震え、赤い瞳が彼女へと向けられた。
「未来の私は、きっとあなたに恋をしているでしょう。」
「……。」
「あなたが教えてくれなくても、私は分かりますよ。」
一瞬で顔が赤く染まったルイーゼは、小さな声で答えた。
「はやく……、寝てください。そんな意味深なことを言わないで。」
「あなた自身も気づいていたようですね。」
「……。」
「そこまで鈍い愚か者ではなかったようですね、未来の私は。」
彼は微笑んで目を閉じた。
ルイーゼは壁際に立ち、そのままエドワードの傍を見守る。
疲れていたのか、彼の呼吸はすぐに穏やかになっていった。
本当に不眠症の患者とは信じがたい呼吸だった。
漆黒の髪と対照的な白い肌、その下にくっきりとした赤みを帯びたまゆと鋭い鼻筋、ほんのりとしたまつ毛と赤い唇……。
広い肩と鍛え上げられた筋肉質な体、どこにいても目を引かずにはいられない堂々とした体格まで。
「……イケメンね。」
ルイーゼは静かにささやいた。
彼女の唇には柔らかな笑みが浮かんでいた。







