こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

356話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 新しい命⑤
「イベール王子様、きゃっ!きゃあ、今、私のほうに顔を向けてくれました!」
クララが大騒ぎして発する声が赤ちゃんのいる部屋に響き渡った。
揺り籠に横たわるイベールが可愛らしい笑みを浮かべると、クララは跳び上がるように喜びを全身で表現した。
「どうしましょう、どうしましょう。すごく可愛い!こんなに可愛らしい赤ちゃんを見たのは初めてです!」
「クララ、本当に……」
私は揺り籠をそっと揺らしながら、イベールを見つめた。
クララも本当に大げさすぎる。
正直に言えば、私はどちらかと言えば冷静で客観的なタイプだ。
自分の子供とはいえ、やっぱり……イベールは確かに可愛い。
だが、出産の報告を聞いて久しぶりに宮殿を訪れたクララは、完全にイベールに夢中な様子だ。
クララが両手に揺り鈴を持って心配そうに振りながら揺り籠を覗き込んでいた。
「それにしても、イベール王子様が生まれてからもう2週間ほど経ちませんか?まだ目を開けないようですね。」
「ええ。私も少し心配していましたが、特に問題はないそうです。」
普通、赤ちゃんは数日が経てば片目でも開けると聞くが、イベールは2週間経っても目を閉じたままだ。
心配になって医師を呼び尋ねたが、健康に異常はないとのことだった。
ただ、もう少し様子を見るべきだという結論に至った。
クララの揺り鈴の音がだんだん激しくなり始めたころ、セイブルが部屋に入ってきた。
クララは慌てて揺り鈴を振る手を止めた。
「陛下、イベール王子様のご誕生をお祝い申し上げます!」
「ありがとう、クララ。そしてあなたが送ってくれた贈り物はとても役立っているよ。」
私が妊娠した後は、妊婦用の下着を用意してくれたのはクララだった。
そして、今日持ってきたのは……うーん。
後でセイブルと一緒に片付けなければ。
「それでは私はこれで失礼いたします。」
「クララ、もっといても構いませんよ。」
「他の侍女やノマ様にお会いする予定がありましたので。それでは失礼いたします。」
クララは軽く笑みを浮かべながら部屋を後にした。
部屋の中には私とセイブル、イベールだけが残り、彼が私に近づいてきた。
「リリー、大丈夫ですか?まだ無理をしてはいけないと医師が言っていましたが。」
「あなたも心配性なんだから。本当に大丈夫ですよ。」
子供を世話するのも、侍女たちの助けがあるおかげだった。
私は多くの医師や魔法使いに囲まれながら産後ケアを受けている最中だ。
西洋では体を早く回復させると言われているが、そんなことは私にはなかった。
セイブルは私が万一風邪を引いても大げさに心配してくれるのだった。
私をぎゅうぎゅうと押し込んでベッドの中に閉じ込め、一歩も外に出られなくしたのだ!
こうして自分勝手に振る舞うのも久しぶりだ。
セイブルは相変わらず心配そうな目つきをしている。
私は腕を組んだまま、彼を見上げた。
「それなら、これからは私とした約束を守らないといけませんよ。」
「どんな約束ですか。」
「私が赤ちゃんを産んだら、この呪いを解くって言ったじゃないですか。私の苦しみを私に返してください。」
確かに出産まで苦痛を引き受けると言ったが、それでも彼はまだその呪いを背負ったままだった。
セイブルは私の目を見つめ、そっと微笑んだ。
「うーん。リリーの苦しみを僕が一生持ち続けるのではダメですか?」
「約束が違うじゃないですか!痛いのがそんなにいいんですか?」
「この苦しみがリリーのものだと思うと、少し良いもののような気も……。」
彼がいたずらっぽく笑いながら私に口づけした。
「はあ、本当に。困ったときにキスすれば私が喜ぶとでも思ってるの?」
いいわ、交渉は後にして、まずはキスを受け入れておくべきよ。
セイブルの柔らかいキス、そして部屋の中に漂う赤ちゃんの香りのおかげで、自然と和やかな気分になった。
その温かい雰囲気の中、イヴェールが小さな声でうなる音が聞こえた。
私はクスクス笑った。
「お父さんが来たと思っているのね。」
まだ見えもしないはずなのに、イヴェールはセイブルが来るたびにこんな風に声を上げていた。
彼は慣れた様子でイヴェールを抱き上げた。
口元には穏やかな微笑みを浮かべていた。
「何度見ても不思議だ。」
不思議だ。
本当に、いくつもの意味で。
イヴェールを産んだ初日、彼が言った言葉が思い出された。
『子どもが生まれるということが、こんなにも嬉しいことだったんですね。』
ブランシュを腕に抱いたとき、そしてイベールを腕に抱いたとき、セイブルが感じた感情は少し異なっていた。
それは、非常に悲しい言葉だった。
セイブルにとっても、そしてブランシュにとっても。
彼がその言葉を口にしたとき、ブランシュが部屋の中に入ってきた。
聞こえていなかったような気もするが……。
「ねえ、セイブル。最近、ブランシュが少し変わったと思いませんか?」
「変わったというのは、どの部分ですか?」
「うーん……普段と違って、少し元気がないというか。大人しくなったというか。」
普段なら特に用事がなくてもよく訪ねてきたブランシュだったが、最近は何か用事がないと来なくなったように思えた。
隣に座って、色々と賑やかに話してくれた子どもだったのに。
言葉も少なくなっていた。
顔だけでも頻繁に見れば、何か変化を感じられるはずなのに。
最近は食事もベッドで別々に取っている状態だ。
私のかわいい子が、これまでずっと会えないこともあった!
この前、忙しいのか尋ねたら、勉強が忙しいと言っていたけど……本当だろうか?
「確かに……最近、考え込むことが多くなったように見えます。」
セイブルも深刻な表情で話した。
うーん、やはり二人目が生まれてから、いろいろと思うことがあるのだろうか。
ブランシュは、自分の誕生が祝福されなかったという事実を知っているのだろう。
普通の子どもたちも、弟や妹が生まれると寂しさや嫉妬を感じると言われるが、ブランシュも似たような感情を抱いているのではないか。
「二人目が生まれて、寂しさを感じているのだとしたら、どうしましょう……。」
「心配ですね。そして最近、大臣たちの間で妙なことを言うようになった気がします。」
「妙なことって何ですか?」
最近彼らが少し物静かになってきたと思ったら、また何かしでかしたのかしら?
セイブルが少し困ったような顔をした。
「『王子が生まれて、王位継承の問題が解決した』みたいな話をしていたんです。やっぱり伝統的に、女性より男性の継承権が優先されるから、そんな言葉が出てくるんでしょうね。」
私も思わず口がぽかんと開いてしまった。
いや、なんだって?彼らは一体何を考えているの?
ブランシュがこれまでどれだけ一生懸命勉強して、国のために尽くしてきたか分かっていないの?
私が宮殿を離れていた間、摂政となったセイブルの代わりに国政を支えてきたのはブランシュだったのに。
なのに、イベールが生まれたからって、イベールに王位を譲ればいいだなんて?
「ブランシュもその話を聞いていたのでしょうか?」
「分かりません。直接話をしたわけではないので……」
もし聞いていたとしたら、ブランシュの性格上、私たちに何も言わずに心の中でじっと抱え込んでいる可能性が高い。
今すぐ行って抱きしめてあげて慰めなければ。
大事な子が小さな心に傷を負ってしまったらどうする?
「ちょっとブランシュのところに行ってきますね。」
「一緒に行きましょう。とりあえずイベールは乳母に任せて……うん?」
その時、セイブルが何か異変を感じたかのように言葉を止めた。
彼の視線はイベールの顔に向かっていた。
いつの間にかイベールが私たちを見ていた。
閉じていた瞳が開かれ、紫色の瞳孔が輝いていた。
……え?ちょっと待って?!
「セイブル、だめ!」
私は慌ててセイブルに向かって手を伸ばした。
しかし、すでに手遅れだった。
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テーブルの上にはたくさんの本と書類が山のように置かれていた。
堅いテーブルがその重みに押しつぶされそうに見えた。
そしてその間に、小さな人影が見えた。
机の前に座る少女もまた、本に沈み込んでしまいそうに見えた。
ブランシュの顔には笑顔一つなく、ただひたすら集中していた。
座ったまま何時間もじっとしているようだったが、その姿から疲れた様子は全く見受けられなかった。
乳母も一瞬たりとも休まず、声をかけることができずにいた。
むしろ自分の息遣いや足音一つでブランシュの集中を妨げるのではないかと気を使い、そっと部屋を出て行った。
普段から仕事に没頭する姿はよく見られたが、最近はどこかその雰囲気が変わっていた。
どことなく、焦りと緊張が感じられるようだった。








