こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

225話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 一つになるために⑥
次の日、少し早く目を覚ましたラエルは、朝食の準備をしていた。
キッチンで忙しそうに動いている彼を見たマリが声をかけた。
「陛下、いや、ラン。今日は私が準備するわ。」
「大丈夫だよ。君はもう少し横になっていて。」
「いいえ、とんでもないです。私がやりますから、少し休んでください。」
それでも、明るい黄金色の光を浴びて料理道具を持っている彼の姿を見ていると、何となく不思議な気持ちになった。
しかしラエルは、陽光に照らされたままこう言った。
「元々、僕の趣味は料理だった。」
「嘘をつかないでください。何が陛下の趣味が料理ですか。」
「本当だよ。野営する時はいつも自分で料理をしていたんだ。騎士たちの料理担当が下手だと耐えられないからね。」
彼はフライパンの中で食材をひっくり返しながら、まるでプロのシェフのような手さばきを見せた。
その姿は驚くほど自然で、まるで料理の天才そのものだった。
マリは思わず感嘆した。
『やっぱり万能の天才だわ。』
彼女は感心しながら、彼の多才さを再確認した。
音楽なら音楽、剣術なら剣術、政治なら政治。
手を出せば何でもこなせる彼の才能に改めて驚かされた。
料理も普通ではなかったようだ。
ラエルはわざとらしく手を広げながらくすっと笑った。
「これは実は秘密なんだけど、幼い頃の夢が情熱的な男性だったんだ。」
「……嘘っぽいですね?」
「そうだね、実は嘘だ。」
冗談めいた軽口だった。
そんなこんなで、限られた朝の時間がゆっくりと流れていった。
マリは椅子に腰を下ろし、ぼんやりと彼が料理をする姿を見つめていた。
呆然とため息をつきながら、彼が料理を出してくれるのを待つなんて。
想像もしていなかった日常の一場面に、まだ慣れない自分がいた。
「できたよ。」
「わあ。」
マリはラエルが作った料理を見て驚嘆した。
湯気が立ち上るアスパラガススープと柔らかなパン、そしてさっぱりしたサラダに蜂蜜がかかったパンケーキまで。
丁寧に心を込めて作られた朝食だ。
味も驚くほど美味しかった。
「食べる価値、あった?」
「はい、とても美味しいです。」
「そうかい?」
「はい、ありがとうございます。」
ラエルは彼女をじっと見つめながら言った。
「空っぽの言葉?」
「え?」
「感謝しているなら、感謝の挨拶をしなければ。」
マリは彼が何を言おうとしているのか察し、頬を赤らめた。
彼女は彼の頬に軽く唇を当ててから言った。
「こ、これが感謝の挨拶です。」
「なんだって?」
「それならどうするの?」
ラエルは微笑を浮かべ、彼女の腰をそっと抱き寄せた。
そしてそのまま深いキスをした。
彼の舌が彼女の唇を優しく撫でる感触に、彼女の体が小さく震えた。
彼女の動揺に気付いたラエルはさらに大胆になり、彼女の口内を熱く探るようにキスを続けた。
しばらくその状態が続いた後、ラエルはゆっくりと唇を離し、彼女の耳元で軽く囁いた。
「朝ごはん、食べないと。」
「は、はいっ!」
マリは真っ赤な顔で視線をそらしながら、テーブルに目を移した。
胸がドキドキして、食事の味もよくわからなかった。
ラエルは彼女が食事をする様子を静かに見守りながら尋ねた。
「今日、何かしたいことはないか?」
マリは考え込んだ。
ただこうして彼の別荘にいるだけでも十分だったが、何か一緒にできることをするのも良いかもしれない。
「ピクニックに行きたいです。」
「ピクニック?」
「はい、美味しいお弁当を持って素敵な場所で遊んで、戻ってきたいです。」
ラエルは微笑みながら頷いた。
「分かった。この近くには景色の良い丘があるから、そこに行こう。」
こうして二人はピクニックに出かけた。
マリは降り注ぐ陽射しの中で、晴れやかな表情で言った。
「いい天気ですね。陽射しがとてもきれいです。」
「最近雨が多かったけど、今日は運がいいな。」
マリは片手にお弁当を持ち、ラエルの方を見上げながら慎重に尋ねた。
「もしかしてピクニックがお嫌いなんですか?もし嫌なら、他のことをしても……」
ラエルはくすっと笑いながら、彼女の髪を軽く撫でた。
「君と一緒なら、何をしていても楽しいよ。心配しないで。」
マリはラエルの手を握り、森を歩き始めた。ゆっくりと穏やかに。
『いい感じ。』
マリは森の空気を深く吸い込みながら考えた。
青々とした森を歩くと、まるで自分が癒されていくような平穏な気持ちになった。
一番良いのは、何もない静かな場所を二人で歩いているということ。
その瞬間、ただ彼と一緒にいる感覚が胸を満たした。
『この瞬間が永遠に続けばいいのに。』
その時、ラエルがぽつりと尋ねた。
「何を考えているの?」
「えっと、別に……何でもないです。」
ラエルは微笑みながら彼女の手を引き、言った。
「着いたよ。」
マリは視線を上げ、小さな感嘆の声をもらした。
青い湖が日差しを受けてキラキラと輝いていた。
想像以上に美しい景色に、マリは思わず息を呑んだ。
「きれい……どうしてこんな場所を知ってたんですか?」
「たまたまこの前ここを訪れた時に見つけたんだ。景色が素晴らしかったから、君と一緒に来たかった。」
マリは微笑みながら、そっと彼の肩にもたれた。
「ラン、知ってますか?」
「うん?」
「好きです。」
ラエルの唇が柔らかく微笑んだ。
「僕も。僕も君が好きだ。」
二人は日差しを浴びながら湖畔に座り、いろいろな話をしながら、持参したお弁当を食べて過ごした。
そんな時、ふと視界に意外な光景が映り込んだ。
「え、あれ?結婚式みたいですね。」
十数人ほどの人々が湖の一角に集まっていた。
年老いた村長らしき人物が前に立ち、正装した若い男女が並んでいる様子から、屋外での結婚式を挙げようとしているようだった。
「近くの村の人たちみたいだね。行って見学してみる?」
「人目に付いても大丈夫でしょうか?」
二人は皇帝と王妃だった。
「こんな田舎の村の人たちが私たちを知っているわけがないさ。」
その言葉にマリはそっと彼を見つめた。
確かにそうかもしれない。
二人はそっと立ち上がり、結婚式を見守ることにした。
小さな村での簡素な結婚式だったため、豪華なものではなかった。
村長の祝辞が終わると、新郎新婦が誓いの指輪を交換し、村人たちが拍手で彼らの未来を祝福していた。
「素敵ですね。」
「そうだね。」
質素な結婚式だったが、新郎新婦はとても幸せそうだった。
お互いを愛し合っていることが伝わってきて、マリはうらやましそうに二人を見つめていた。
『私も彼とあんなふうに……。』
そう思った時、彼女の手を彼がぎゅっと握り締めた。
二人の視線が一瞬交わった。
言葉はなかったが、心が通じた気がした。
「……マリ。」
その時、彼が口を開いた。
続く言葉を待っていた彼女だったが、突然聞こえてきた声が二人を呼び止めた。
「ナオリ。ナオリ様!」
驚いて振り返ると、村で結婚式を挙げた人々だった。
彼らはラエルとマリのことを通り過ぎる貴族のように見て、ナオリと呼んでいた。
「どうした?」
「それが……その……」
結婚式を挙げた若い男性が話し始めた。
「もしよければ、ブーケを受け取っていただけませんか?村にはブーケを受け取るのにふさわしい方がいなくて……」
彼は申し訳なさそうに、少し緊張した表情を浮かべながら続けた。
「もし気を悪くされたら申し訳ありません。ただ、この湖でブーケを受け取ると必ず愛が成就するという言い伝えがありまして。良い意味で……」
「必ず愛が成就するって?」
若い男性は微笑みながら頷き、その顔には明るい表情が浮かんでいた。
「はい、そうなんです。以前のカップルもそうやってこのブーケを受け取り、愛が成就しました。神秘的な奇跡を起こすブーケなので、誰にでもあげるわけにはいかなくて……」
ラエルはマリを見つめた。
この湖での結婚式でブーケを受け取れば愛が成就する?
そんなことがあるのだろうか?
田舎特有の素朴な信仰にすぎない。
しかし、マリは何かを考えた様子でブーケをじっと見つめた。
「はい、いただきます。」
マリは新郎新婦からブーケを受け取り、村人たちは歓喜の表情でマリとラエルを祝福した。
「お二人、本当によくお似合いです!」
「お幸せに!」
短い結婚式は終わり、マリとラエルは再び星の広場へ戻っていった。
帰り道、マリはブーケの中の花を見つめながら、微笑を浮かべていた。
「どうして笑うの?」
「ただ、うれしいんです。愛が成就するブーケなんて素敵じゃないですか。」
ラエルは優しい笑みを浮かべた。
彼女に向けられたその笑顔には愛が込められていた。
二人は手をつないで、しばらく無言で森の小道を歩いた。
お互いに言いたいことはたくさんあったが、もう1日が過ぎれば二人は帝国の皇帝と王妃として戻らなければならない。
その現実が二人の胸を締め付けた。
「ラン、私たちが一緒になるのは難しいのでしょうか?」
突然の問いにラエルは足を止めた。
それまで互いに触れずに避けてきた話題だった。
彼が答えられずにいると、マリは彼の袖をつかんだ。
「わかっています。すべてを捨てて逃げ出さない限り、私たちが結ばれるのは簡単なことではないということ。でも、どうしたらいいんですか?」
マリは揺れる瞳で彼を見上げた。
「私は、あなたとこうして離れたくないんです。どう考えても、あなたなしでは生きていけない。」
「……マリ。」
動揺する気持ちのせいだろうか。
彼女の唇がかすかに震えていた。
ラエルは真剣に彼女を見つめ、決然とした声で言った。
「俺も君と同じ考えだ。俺はどうしても君と一緒にいる。どんな困難が道を阻もうと、たとえ運命に逆らうことになろうとも、それは関係ない。君は俺のものだ。君が俺の運命である限り、俺は決して諦めない。」
その言葉を聞いたマリの瞳が揺れた。
彼の強い意志が彼女の胸に深く響いた。
マリは唇を震わせながら尋ねた。
「方法はあるんでしょうか?正直なところ、私にはわかりません。どんなに考えても答えが見つからないんです。」
「俺たち、いや、クローアンと帝国が平和的に一つになるためには、二つの条件が必要だ。」
「どんな条件ですか?」
「一つ目は、クローアン王国が力を持つことだ。東の帝国としても無視できないほどの強大な力を。国力を持てば、その時こそ対等な立場で国婚を議論できるようになる。」
マリはラエルの言葉の意味を理解した。
帝国が侵攻しようとしているのは、根本的にクローアン王国の力が弱いからだ。
もしクローアンが帝国と対等に向き合うのが困難なほどの強大な力を持っていれば、話は変わってくる。
大きな犠牲を払って戦争を起こすよりも、同盟を結ぶ方が得策だと考えるはずだ。
「そして、もう一つ重要なのは和解の雰囲気だ。これが場合によってはさらに重要な点になるかもしれない。今のクローアンも帝国も互いに対する恨みが深すぎる。その恨みを解消しなければならない。」
マリは慎重に相手を見つめた。
「でも、その問題を解決するには時間が足りません。」
時間さえあればどうにかなる問題だった。
しかし、現状では戦争が差し迫っており、猶予がないのが現実。
そこでラエルが言った。
「いや、時間は稼げる。一つだけ我々を助ける策がある。」
マリは疑念の表情を浮かべた。彼は空を見上げて言った。
「もうすぐ冬が来る。」
「……あ。」
マリは彼の意図を察し、感嘆した。
「私は皇帝の権限を使って、どうにかして進軍を遅らせるつもりだ。いずれにせよ、冬が近づいているため、本格的な戦争を行える時期ではない。」
彼は力強い目で彼女を見つめた。
「その間に、私たちは両国の和解の雰囲気を何とかして作り出す必要がある。もし、その雰囲気が少しでも解けるならば……」
ラエルは断固とした口調で言った。
「私の皇位を賭けてでも、あなたとの国婚を推進する。」
深い森の中で、彼らは互いに運命に立ち向かう決意を固めた。
互いのために、一緒にいるために、決して屈服しないと誓い合ったのだ。







