こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

226話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 一つになるために⑦
会話を終えた二人は森の入口に到着した。
今やそれぞれの場所へ戻るときだった。
彼らは最後のキスを交わした。
互いへの渇望が切なさと混ざり合い、広がっていった。
しばらく続いたキスが終わった後も、二人は簡単にはその場を離れられなかった。
ただ互いを見つめるだけだった。
「ラン、私たちまた会えますよね?」
マリの声はかすかに震えていた。
ラエルは強く彼女を抱きしめる。
「そうだ、次に会うときは君が俺の妻になっているだろう。」
その言葉に、マリは微笑んだ。
それは夢のような出来事だった。
「はい、それでいいです。もう行きますね。」
マリは愛しさと毅然とした声でそう言った。
涙がこぼれそうになるのをこらえながら、彼女は急いで背を向けた。
「……本当に行きますね。」
マリは事前に準備していた馬に乗った。
出発しようとしたその時、ラエルが彼女に向かって言った。
「神の加護が君と共にありますように。」
その祝福に、マリは答えた。
「はい、ランにも神の加護がありますように。もし戦いが起こることがあれば、必ず注意してくださいね。絶対に無茶をしないでください。」
マリは心の中で神に祈る。
『主よ、本当に私たちを祝福してください。どうか私とランが幸せになれるようにしてください。』
こうして二人は、足を止めることなくそれぞれの使命に向かって別れた。
それぞれの陣営に戻った二人は、国を守るために最善を尽くすことを誓った。
互いのために、愛する人のために。
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マリは王国に戻ると、まずキエルを呼び出した。
「どういうご用件でしょうか、殿下?」
マリの冷静な声に、キエルは疑念の表情を浮かべた。
「ここを離れて帰還してください。」
キエルの顔が引き締まり、険しい表情になった。
「それはできません。私を気遣ってのことですか?」
マリは否定しなかった。
「これまでのところ問題はありませんでしたが、戦争が始まった後も王国に留まっていると、殿下の立場が難しくなります。今こそ帰還するべきです。」
西帝国との戦争においてクローアン王国を支援することは、許容される範囲の行為だった。
西帝国が東帝国の属国であるためだ。
しかし、現在は事情が変わった。
東帝国との対立を控えた状況下で、東帝国の大貴族である彼がマリのそばにいることは、これ以上許されるものではなかった。
「構いません。それに、キエルという一個の騎士としてここにいるだけです。セイテン家門や関係ない私個人の行動にすぎないため、家門に大きな損害を与えることもないでしょう。」
マリは何も言えない表情を浮かべた。
西帝国と対峙した際に同行したシュルト騎士団とその軍団兵はすでに東帝国へと戻っている状況だ。
彼がマリに忠誠を尽くしたとはいえ、その忠誠心を部下たちにまで強いることはできず、クローアンに留まったのはキエルただ一人だった。
「私はただ、あなたの騎士としてそばにいるだけです。」
「殿下……。」
「どうかあまり心配なさらないでください。すでに適任の者に家門のすべての権限を委ねた状態です。仮に東帝国が私の行動を問題視しても、彼らが知ったとして私を罰するだけのことです。」
「……!」
マリは拳を強く握った。
キエルは、自分のすべてを投げ打ってマリのそばに残ったのだ。
それはあまりにも献身的で、誠実な心から来る行動だった。
しかし、それでもマリにとっては正しい選択とは思えなかった。
何より彼が自分のすべてを犠牲にしている様子を見るのは耐えられなかった。
その意志をくじけさせないようにと、マリは別の方法を模索した。
「これは単に殿下のためだけの提案ではありません。ここに留まるよりも、東帝国に戻るほうが私にとってはるかに役立つ道です。」
「どういう意味でしょうか?」
不審な表情を浮かべる彼に、マリは説明を続けた。
「実際、殿下が私のそばにいることは、実質的には大きな助けにはなりません。どれだけ殿下が優れた騎士であったとしても、戦争中に個人の影響力はごくわずかですから。」
キエルは口をつぐんだ。
彼女の言葉が的を射ていたから。
「しかし、東帝国に戻れば話は違います。殿下は東帝国で重要な大貴族として尊ばれています。ここに留まることとは比較にならないほど大きな働きをすることができるでしょう。」
「それは……?」
「はい、その通りです。殿下には東帝国に戻ってクローアン王国を支援する力を見せていただきたいのです。」
キエルは彼女の言葉の意味を理解し、冷静にうなずく。
彼女は、彼が帝国でクローアン派としての地位を築き、両国関係で調整を図るべきだと考えていた。
確かにここで騎士として留まるより、彼女を助けることのできる道だ。
しかし、キエルは簡単には納得しなかった。
彼女を一人にして去るのが気がかりだったからだ。
そこで彼女は言った。
「私はもう大丈夫です。ですから、私を信じて旅立ってください。」
キエルはマリの決然とした眼差しを見て、彼女がついに決心したのだと気付いた。
「……もう痛くはないのですか。」
「どのような状況でも乗り越えると決めましたから。」
それを聞いたキエルはこっそりとため息をつき、彼女の言葉にうなずいた。
「わかりました。殿下の言葉に従います。ただし、条件があります。」
「……条件?」
「どこにいても、私はあなたの騎士です。困難な状況に直面したとき、私がいることを忘れないでください。」
マリはしばらく戸惑った後、微笑んで彼を見つめた。
どんな状況でも変わることなく自分を思ってくれる彼の気持ちに感謝する。
「はい、ありがとうございます。」
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こうしてキエルが戻った後、マリは方法を考えた。
『彼が進軍を遅らせようと努力しても、時間を無限に引き延ばすことはできない。できる限り早く対策を講じなければ。どんな方法を使ってでも……。』
多くの能力を持つ彼女であったが、簡単に方法が思い浮かぶわけではなかった。
最初から不可能なことに固執しているのではないかとも思った。
『違う。必ず方法はあるはず。』
彼女がそう自分を奮い立たせ、考えを巡らせている間、国境に配備された10万人を超える大軍の緊張感は次第に高まっていた。
兵士同士の衝突が頻発し、実質的に戦争に突入したも同然の雰囲気が漂っていた。
『一体いつ進軍を開始するつもりなの?』
『陛下は作戦の準備を進めているのかしら?』
同盟国軍は皇帝の進軍命令を待つだけだ。
『今回ばかりは絶対に同盟国軍に負けるわけにはいかない。』
『必ず勝利してみせる。』
王国軍は決意を固めて互いに相手を見据えた。
こうして張り詰めた緊張感が極限に達しようとしている中、予想外の出来事が起こった。
両軍に突然熱病が蔓延し始めたのだ。







