こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

234話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 和平への道②
そして数日後、城の外の薄暗い場所で身元不明の遺体が発見された。
健康そうな男性の遺体だったが、特徴的な顔のほくろがはがされ、殺害されていた。
「う……誰だ?」
「誰がこんな残忍なことを?」
遺体を発見した兵士たちは顔をしかめた。
「騒ぎ立てるな。何事だ?」
その時、近くで響いた冷ややかな声に兵士たちは驚き、慌てて敬礼した。
「ナムジャク殿をお呼びします。」
現れたのは王室騎士団の副団長フェレディン・ナムジャだった。
フェレディン・ナムジャは不快な気配を隠すように仮面をつけたかのような無表情な顔をしていた。
「ここで身元不明の遺体が発見され……。」
「分かった。」
「え?」
「私が処理する。お前たちはもう行って仕事を続けろ。」
兵士たちは首をかしげて疑問に思った。
『普段はこんな仕事を引き受ける方ではないのに?』
『そうだ。表情があんなに硬いなんてどういうことだ?』
『機嫌が悪そうだな。余計なことが起こる前に戻ろう。』
兵士たちがそそくさとその場を立ち去ると、フェレディン・ナムジャは遺体を見つめながら笑みを浮かべた。
「悪くないな。顔を引き剥がされているのは少々不愉快だが、しばらくの間は我慢すればいい。」
そう語るフェレディン・ナムジャの笑みは、ラキ・デ・ストーン伯爵のそれと驚くほど似ていた。
なんと、ストーン伯爵がフェレディン・ナムジャに成り代わっていたのだ。
以前、ヨハネフ3世が使用していた東方の変容術と、直接引き剥がした顔の皮を利用した結果だった。
「もう時間があまり残っていませんね。」
フェレディン・ナムジャク、いや、ラキはモリナ女王が滞在する建物を見つめた。
「素敵な贈り物を用意しているので、どうかお気に召していただければ幸いです。」
彼は冷ややかな声で言った。
「私が愛する殿下のために。」
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しばらくして、ついに両国は和平を結ぶことで合意した。
まだ白く積もった雪が溶ける前、遅い冬の出来事だった。
『ついに。』
マリは震える瞳で窓の外を見つめた。
『これで彼と一緒にいられる。』
かつては想像すらできなかったこと。
しかし、今はそれが夢ではなく、目の前に迫った現実だった。
『もちろん、すべてが解決したわけではないけれど。』
まだ両国間の問題は残っている。
しかしマリはすべてがうまく解決するだろうと固く信じていた。
ラエルと自分自身のために、そして皆のために。
そうして夢のような期待感とともにしばらくの時間が過ぎ、和平協定を結ぶための会談の日がやって来た。
「アルピエン山に向けて出発します、殿下。」
馬車に乗るマリに騎士が伝えた。
会談場所はアルピエン山の麓に決まった。
これは和平の契機となった雪山での救助事件の場所であり、両国の共同影響圏にある中立的な場所でもあったためだ。
「行きましょう。」
和平協定を目的とした会談だけに、護衛の人員は最小限だった。
明確な理由は相手を刺激しないためだったが、それ以上に、両国の君主であるラエルとマリが互いを信じていたからだ。
帝国も最小限の護衛人員のみを派遣することで合意した。
しかし、馬車が出発する直前、冷たい風の音とともに先頭に結ばれた王家の旗が「パサッ」と音を立てて破れてしまった。
「これは……すぐに新しい旗に交換します。申し訳ありません。」
騎士が緊張した表情で頭を下げた。
『何だ?』
マリも不安な気持ちを抱いた。
どの国においても旗が破れるというのは重大な不吉な兆候とされている。
和平会談を目前にしてこんな不吉なことが起こるなんて?
「先頭車両、出発!」
旗を交換した後、護衛責任者である副団長フェレディン・ナムジャが命令を下した。
騎士団の団長であるバルトンがマリが留守の間、王国軍を統率する役割を担っていた。
騎士たちは何か問題が起こるのではないかと警戒しながら周囲を見張り、気を抜かなかった。
しかし、最初の不吉さとは異なり、特に問題は発生しなかった。
馬車は何事もなく会談場所に到着し、同じ頃に到着した帝国の皇帝ラエルが和やかな表情でマリを迎えた。
「マリ!」
思わず声を張り上げたラエルだったが、すぐに落ち着きを取り戻して言葉を改めた。
「クローアン王国のモリナ女王殿、遠路はるばるお越しくださり感謝いたします。」
マリは心の中でくすっと笑った。
「陛下も遠路はるばるご苦労様でした。」
「終戦および両国間の不可侵条約……」
ラエルはしばし言葉を切ってから続けた。
「国婚を伴う同盟協約について議論しましょう。」
国婚。
その言葉を耳にした瞬間、マリの胸がどきりと高鳴った。
彼女はわずかに赤みを帯びた顔で視線をそらした。
「……はい、陛下。」
こうして協議が始まった。
互いの関係が親密なだけに雰囲気は悪くなかったが、簡単に合意文書に署名することはできなかった。
両国の利益関係が複雑である部分については、慎重に調整が必要だったからだ。
いくら互いに愛していると言っても、国家の利益が絡む問題に無条件で譲歩するわけにはいかなかった。
終戦と国婚を伴う同盟という大原則については簡単に合意に至ったものの、細部の条項に入ると二人は長い議論を繰り広げなければならなかった。
「やはり君と交渉するのは簡単なことではないね。」
ラエルは知らず知らずのうちに微笑んだ。
聡明な彼女。
自分の味方でいる時は気付かなかったが、相手国として向き合うとここまで粘り強い交渉相手はいなかった。
「それでもこの部分は、王国東部地方の人々にとって譲歩できない事柄ですから……。」
マリは申し訳なさそうな顔で控えめに話した。
ラエルは微笑みながら返した。
「分かった。それならその部分は王国側で進めよう。ただし、代わりにこちらの事項を譲歩していただきたい。」
全体的には交渉は円滑に進んだ。
互いの誠意と思いやりが感じられる交渉の場でありながら、時に穏やかな議論もある。
その間、静かに警護に立っていたフェレディン・ナムジャが周囲の騎士に低い声で話しかけた。
「少し周辺を見回って来てくれ。」
「はい、分かりました。」
騎士は深く考えることもなく頷いて従った。
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「……静かだな。」
近くの崖に登ったフェレディン・ナムジャク、いや、ラキは笑みを浮かべた。
崖からは交渉の場が一目で見下ろせる位置にあった。
「両国を破滅させる方法は簡単だ。」
冷静に微笑みながら、彼は近くに隠しておいた弓を拾い上げた。
「王国軍がラエル皇帝を殺せばいい。ただそれだけで十分だ。」
冷酷な発言だ。
王国騎士団に偽装してラエルを暗殺するだと!?
もしそれが実行されれば、和平協定はもちろん、王国の運命も終わりを迎えるだろう。
激怒した帝国軍が王国を壊滅させることは明白だった。
さらに、この付近には帝国の代表的な主戦派であるメイル・フチャクの第一軍団が駐屯していた。
「この一撃で全てが終わる。王国も……そしてモリナ、君の幸せも。」
彼は矢を慎重に弦にかけ、ゆっくりと引き絞った。
矢は幕舎の中央部、ラエルが座る位置を狙っていた。
鋭く鍛えられた鉄製の矢は、あの幕舎の薄い布を軽々と突き破り、ラエルの体を貫くはずだった。
『これで終わりだ。』







