こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

244話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 旅行
マリーとラエルが結婚してから、もう1年以上が過ぎた。
ラエルは宮殿の事務室で業務をしている最中、マリーが送った手紙を読んでいた。
<クローアンでは冬が過ぎ、気温がだいぶ暖かくなったそうです。宮殿はいかがでしょうか?昨日は川辺に咲く花を見て懐かしい気持ちが込み上げました。夜はまだ冷えますが、風邪を引いていませんか?会いたいです。本当に、とても。>
手紙にはラエルへの愛がたっぷり込められていた。
読みながら自然に柔らかな笑みが浮かぶような、愛情あふれる手紙だった。
しかし、その手紙を読んでいるラエルの表情はどこか奇妙だった。
彼女が直接書いた愛の手紙を読んでいるのに、顔には不満の色が漂っていた。
そうなるほかない。
「……いつまで手紙だけ読まされる?……手紙はいい。でも、私たちは夫婦じゃないのか。それなのに、なぜこうして手紙だけのやり取りをしなければならないんだ?」
彼女に会えない日々が4か月を超えたのだから!
ラエルの顔はほんのり赤くなり、不満を露わにしていた。
ラエルはマリーに会いたくてたまらず、思わず声を荒げそうになった。
そのとき、隣でオルンがくすくすと笑った。
「お二人ともあまりにもお忙しいご様子ですから。お立場上、仕方のないことでしょう。」
ラエルはオルンの言葉を聞き流しながら、内心で呟いた。
『全く、皇帝を殴れるわけでもないしな……。』
ラエルとマリーが会えない理由は明白だった。
二人が皇帝と王であるため、お互いに会うには膨大な距離を越えなければならず、その役割や責任のために簡単に会うことができなかったのだ。
その結果、二人が結婚してから1年が経っても、実際に一緒に過ごした時間は3か月にも満たなかった。
このような状況で、ラエルはマリーに会いたいという渇望を日々抱きながら過ごしていた。
「これは何の冗談だ?」
ラエルは苛立ちを感じながら考えた。
もうこれ以上、こんなやりとりはやめて、彼女は本人と直接話したいと思った。
「オルン、クローアン王国に使者を送ったことは?」
「ありません。」
「では、クローアン王国から私たちの帝国に人を送ったことは?」
「それもありません。」
「なぜない?私たちの帝国とクローアン王国が協力して進めている案件がどれだけ多いと思っている?」
ラエルはオルンを見つめ、詰め寄った。
その詰問に、オルンは困惑した顔で少し怯えた表情を浮かべて答えた。
「申し訳ありませんが、現時点では何もありません。すべてモリナ殿下が完璧に指揮をとって進めており、何一つ問題が残されていないのです。」
ラエルは眉をひそめた。
「次に会うときは、何か一つでも引っかかる問題を残しておいてもらわないと、このままではもう二度と会うことができないじゃないか。」
そう心の中で毒づきながら、彼は悶々としていた。
そのとき、オルンがゆっくりと席を立った。
「どこに行こうとしているんだ?」
「午後6時ではありませんか?そろそろ退勤しようかと思います。」
周囲の様子から察するに、またパーティーに出席しようとしているようだ。
平和が訪れた後、オルンは思う存分社交を楽しんでいた。
どうやら密かな幸せを満喫しているらしい。
独身を謳歌しているというが、オルンがあわただしく立ち去ろうとする姿を見て、ラエルは苛立ちを覚えた。
「ダメだ、今日は夜勤だ。」
「えっ?」
オルンは信じられないというように飛び上がった。
「今日のパーティーでエリシャ侯爵と会う約束が……!」
「エリシャ?前回はユーリ伯爵じゃなかったか?いや、バークサー子爵だったか?どっちにしろ、誰でもいいがダメだ。国の仕事の方が大事だ。」
オルンは不満そうに反論した。
「再三おっしゃったように、出勤中に追われない代わりに、退勤時間を保証してくださるのではありませんでしたか?」
「そうだったか?あまり覚えていないな。君が言うほど重要な話だったか?クローヤン王国と会談が必要な案件を思いつけば、何かしら記憶に残るかもしれないが。」
オルンはラエルの言葉に口をつぐんだ。
『結局、そういうことか。』
「わかりました。どうにかしてお二人が会う理由を見つけられるよう努めます。」
そうしてオルンは、自分の退勤のために、孤高を守る皇帝を説得することを決意し、必死に頭を働かせた。
一方その頃、クローアン王国では――
「さあ、そこの荷物を早く運び出して!」
「少し休んで!無理をしすぎるなよ!」
以前の荒廃した様子が想像もつかないほど、王国は活気にあふれていた。
かつて戦乱に覆われていた王国全体に残されていた傷跡は、もはや見当たらなかった。
王国民の顔には笑顔があふれていた。
しかし、王宮で憂いの表情を浮かべている一人の女性がいた。
それはマリだった。
彼女は王宮の執務室で深いため息をついていた。
「はあ。」
「何か問題がありますか?」
新たに任命された王室騎士団の団長であるバルハン伯爵が心配そうに尋ねた。
「いいえ、何も問題ありません。」
彼女はそう答えたものの、表情は晴れないままだった。
バルハンがさらに心配そうに視線を送ると、マリは大丈夫だと微笑んでみせた。
「本当に何もありません。無駄に心配させてしまってごめんなさい。」
特別な問題があったわけではなかった。
しかし、彼女がこんな表情をしている理由はただ一つ――ラエルのことだった。
彼に会いたかった。
『こうして手紙だけを何度も書いてどうするの?』
マリは書き終えた手紙を見つめ、深いため息をついた。
それは彼に宛てた手紙。
会いたいという気持ちを抑えきれず手紙を書いたものの、彼女の虚しい心は全く癒されることがなかった。
会いたい、ただ会いたい、何度でも会いたい。
『次に会えるのはいつになるのかしら。もうずいぶん会えていないわ……。』
彼女はペンを置いた。
泣きそうな気持ちで手紙を書く気にはなれなかった。
気持ちを抑えきれず、もう国王であることも何もかも忘れて、彼のもとへ駆け出したい衝動に駆られていた。
「はあ。」
そうして彼女が再びため息をつくと、何か誤解したのか、バルハンが決意したような表情を浮かべた。
「陛下、もし何かお困りのことがあれば、私にお話しください!どんな問題でも私が解決してみせます!」
バルハンは誰よりも忠実な臣下として彼女を支えていた。
マリは感謝の気持ちを込めて微笑んだが、その瞬間、ふと一つの考えが浮かんだ。
「もしかして、私たちの王国から帝国に使節を送る予定はないのですか?」
「私の知る限りでは、予定はありません。」
「そうですか……。」
マリはがっかりした表情で視線を落とした。
もし同盟国へ向かう使節団があれば、どうにかして随行者として彼と一緒に行けないものかと考えていたのだ。
『どうにかして時間を作る方法はないだろうか?』
マリがそんなふうに悩んでいるときだった。
バルハンが突然話しかけてきた。
「皇帝にお会いしたいとお考えですか?」
「……はい。お会いしたいです。」
マリは少し頬を赤らめながら視線を下げた。
短いながらも強い決意がこもった声だ。
バルハンはそんな彼女の姿を見て、一瞬説明しがたい感情を抱いた。
正直、彼は彼女が皇帝に会いたがる姿を快くは思えなかった。
彼女がラエルを単純に尊敬しているのか、それともただ素朴に自分を守ってくれる主君が他の男性に心を寄せるのを嫌がるのかは分からなかった。
それでも彼は忠誠心のある臣下で、自分の感情より彼女の幸せをはるかに重要視した。
「私が一つ方法を考えてみます。」
「本当ですか?」
驚いたマリの問いかけに、バルハンは控えめにうなずいた。
「はい、何とかしてみます。」
こうして、両国の核心的な側近であるオルンと王室騎士団長のバルハンは、マリとラエルが自由に会えるよう取り計らい始めた。
しかし、彼らがどれだけ努力しても、無理やり何かを作り出すことはできなかった。
結局、彼らはマリとラエルにこう言った。
「とりあえず休暇にでも行かれてください!どうせ今は重要なこともありませんし、私が全て対応しますから!」
オルンはラエルにそう言い。
「しばらく出かけてきてください。重要なことは全て私が片付けておきますから。」
バルハンはマリにそう言った。
マリとラエルは当然、気が進まなかった。
しかし、王国と帝国が安定している今、なぜ二人が会ってはいけないのか?
オルンは、忙しい皇帝のために夜の休暇スケジュールまで組んだ。
クローアンの王城や帝国の皇宮にいれば、再び政務に縛られてしまうだろうから、二人のために休暇地を用意したのだ。
「パルゴ島?」
ラエルは地図を見ながら不思議そうな表情を浮かべた。
それは、クローアンと東帝国の中央よりやや南に位置していた。
「はい、私が幼い頃に行ったことがある場所で、風景がとても素晴らしいです。島の人々も穏やかで親切です。ゆっくり休むのにぴったりな場所です。」
ラエルにとっては、実際のところ彼女と一緒にいられるのであれば、場所などどこでも構わなかった。
「そうか、ありがとう。」
「ただし、休暇に行くのは構いませんが、今回は皇帝陛下にとって必ずやらなければならないことがあります。」
オルンは真剣な表情で言った。
「後継者を作ってきてください。」
「……」
「冗談ではありません。このような時こそ後継者を作るべきなのです。」
親友であり忠臣でもあるオルンの忠言に、ラエルは視線を下げて軽くうなずいた。
「そうだな、できる限り努力してみよう。」
こうしてラエルはパルゴ島へ向かう船に乗り込んだ。
おそらく今ごろ、彼女も出発している頃だろう。
『早く会いたい。早く。どうしてこんなに風が弱いんだ。』
ラエルは船上に立ち、マストを見上げた。
陽光を浴びた美しい海がきらきらと輝いていたが、彼の目には全く入らなかった。
4ヶ月も会っていないマリのこと以外、頭には何も浮かばなかった。
『今度会えたら、本当に彼女を離さない。』
ラエルは強く心に決めた。
今まで会えたとしても、常に国政や何やらで一緒にいる時間はとても短かった。
今回はわざわざ離れた島に行くのだから、彼女だけを見つめながら時間を過ごすつもりだ。
しかし、ラエルはふと浮かんだ考えに眉をひそめた。
『まさか、離れた島まで来てまた何か問題が起きるなんてことはないよな?』
理解しがたいことに、マリと一緒にいるときは何かしらの事件や事故が頻繁に起こるように感じていた。
それでも何とか一緒に時間を過ごそうとしても、結局その事件を解決するのに時間を浪費してしまうことが一度や二度ではなかった。
『まさか。いや、そんなはずはない。今回はそんなことはありえない。』
ラエルは強く視線を下げ、再び海を見つめた。
船が早く島に到着することを願いながら。
しかし、何の事件や事故にも遭遇しないことを望むラエルの切なる願いとは裏腹に、その瞬間、マリは夢を見ていた。
マリは夢の中で目を覚ました。
「何の絵を描いているんですか?」
明るい陽射しが差し込む部屋だった。
一人の優しい男性が微笑みを浮かべながら、キャンバスに向かって筆を動かしていた。
草原の風景を描いた絵で、キャンバスの中の人々が明るく笑っている様子が印象的だった。
「風景画ですか?」
「ああ、気分転換にちょっと軽い気持ちで描いてみたんです。」
男性は微笑みながら答えた。
その顔は端正で、柔らかく穏やかな笑みを浮かべていた。
男性の絵を覗き込んだ女性は感嘆の声を漏らした。
豪華に描かれた話とは違い、見ているだけで心が落ち着くような作品だった。
「今回の絵も素敵ですね。」
そう言いながら、女性は続けた。
「あなたの絵を見ると、いつも心が幸せになる気がします。」
マリは目をぱちぱちさせながら夢から目を覚ました。
『突然どうして画家の夢なんかを見たの?』
彼女はラエルに会うために船に乗っている途中だった。
客室で眠りについていたところ、不思議な能力を授かる夢を見たのだ。
『最近こんな夢を見たことなんてなかったのに?』
マリは手を広げてみた。
まだ確認したわけではなかったが、どうやら画家の能力を授かったような気がした。
それも、ただの画家ではなく非常に優れた大画家の才能が宿った感覚だ。
『まさか、また何かが起こるんじゃないでしょうね?』
マリは不安そうな顔で考え込んだ。
能力を受け取ると、それに関連する事件や事故が必ず起きてしまう。
それはもはや法則のようなものだった。
『何も起こらなければいいけど。』
どれだけ待ち望んだ再会だろう?
ラエルが彼女を切望したのと同じように、彼女もまたラエルを切に恋しがっていた。
今回は本当に何の邪魔もなく、二人だけの幸せな時間を過ごそうとしていたのに、こんな夢を見てしまうなんて。
不安な気持ちが込み上げてきた。
『それでも、大げさな夢ではないし、画家の夢なら大したことにはならないでしょう?』
休暇先で何かが起きるとしたら、どんなことが起きるのか?
せいぜい絵を描くくらいのことだろう。
マリはその不安を少しでも紛らわそうと、客室の窓からパルゴ島の方を見つめた。
『早く会いたいです、ラン。』







