余命僅かな皇帝の主治医になりました

余命僅かな皇帝の主治医になりました【41話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「余命僅かな皇帝の主治医になりました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【余命僅かな皇帝の主治医になりました】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「余命僅かな皇帝の主治医になりました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

41話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 火事

狩猟祭は順調に進んでいた。

セリーナは事件や事故もなく狩猟祭が行われている間、書庫に通っていた。

そのおかげで書士とも親しくなり、彼女が来ると書士はお菓子まで持ってきてくれるようになった。

書士は良い人だった。

読書を愛し、たくさん読んできたことが滲み出ているような人から感じられる温かさは、セリーナが憧れる点の一つだった。

「今日も来たんだね。」

「はい、また来ました。行く前にしっかり読もうと思ったら、毎日来ないといけませんから。」

「お医者さんなのに魔法に興味があるみたいですね。」

「魔法も医学も、結局は似たようなものだと思います。役に立つかもしれないと思って読んでみようかと。」

「それで、役に立った?」

「うーん、よくわかりません。この広い図書館で、自分が欲しい情報を見つけるのは、都市で友達を探すよりも難しい気がします。」

セリーナは大きくため息をついた。

以前、一行だけでも見つけて喜んだ時とは違い、今回は完全に手詰まりだった。

棚にある本の中に求めていた本はなかった。

念のため書店にも問い合わせたが、販売記録がなく、存在自体が驚かれるほどだった。

著者の他の本はあるのに、その本だけは見つからなかった。

どうやら著者の個人所蔵本らしい。

「実は探している本があるんですが、作家が自費出版で少部数だけ作ったものらしく、市場には出回っていない本なんです。」

「自費出版なら私も興味あるよ。本のタイトルを教えてくれれば、探してあげられるかもしれない。」

「本当ですか?」

セリーナが目をキラキラさせると、司書は優しい笑みを浮かべて、顎を軽くしゃくった。

「『魔法の誕生』という本なんですが、著者は……」

「リンダ・クィルトン、だろう?」

「はい!そうです!司書さんもご存じなんですか?」

セリーナは司書が著者について話すと、興味津々に食い入るように尋ねた。

すると司書はにっこりと笑いながら答えた。

「もちろんですよ。あの著者は私の妹なんです。」

「えっ!」

セリーナが驚いて声を上げると、司書は笑い声を上げた。

「まさか妹の本のことを言っているとは思いませんでした。あの子はほとんど無名の作家で、あの本は出版社がつかずに自費出版したものなんですよ。数冊だけ作って売ったと聞いています。」

「もし在庫がない場合、著者の方に直接お会いすることは可能ですか?」

「残念ですが、それはできません。妹は去年亡くなりました。」

「……あ。」

セリーナは「亡くなった」と聞いて、どう反応すればいいか分からず、目をパチパチさせた。

しかし、穏やかな司書はセリーナに優しく微笑みながら言った。

「大丈夫ですよ。むしろ妹を覚えてくれている読者がいるということが、私には大きな慰めになります。」

「いえ、むしろ私の方が光栄です。」

セリーナが頭を下げると、司書は懐かしげな表情で昔のことを思い出したのか、話し始めた。

「『魔法の誕生』なら、弟の可哀そうな手で書いた本ですよ。家に自費出版の本がたくさんあります。売れなかったから、倉庫にぎっしり積んであったんです。」

司書は喉の渇きを我慢するように唾を飲み込み、続けた。

「ある日、それを創作に使ったことで大喧嘩になって……」

「……そうだったんですね。」

セリーナは何と言って慰めたらいいのかわからなかった。

日の目を見ることもなく世を去った作家が気の毒に思えた。

惜しい気持ちから、彼女の別の著作も読んだことを思い出した。

読後感も良く、魔法についてもわかりやすく詳細に説明されていた。

そのとき、司書はやや低いトーンで言葉を続けた。

「女性作家の文章は感情的すぎて信頼性に欠ける、なんて言う連中が多いから小説は諦めたらしいんですよ。」

「それは本当に偏った考え方ですね。」

セリーナが鼻を鳴らして憤慨すると、司書は笑って、「読者と出会えたのもご縁なので、1冊差し上げましょう。」

「恩返しがしたいです。」

「いいんですよ。」

司書が穏やかに微笑んで、荷物を持ち上げた。

「ちょうど倉庫が森の近くなんですよ。昔、維持費に困っていた頃、車を無料で貸してくださったんです。すぐ行って戻りますね。」

「じゃあ、私も一緒に行きます。」

セリーナも急いで荷物を持ち、司書のあとをついていった。

「お好きに。」

「話しながら行けば、退屈しないでしょう。」

「この年寄りと話したいなんて思ってるのは、あなただけですよ。」

「まあ……もしもあの作家が生きている人だったら、毎日お話したいくらいです。」

「話すのがうまいのね。」

司書はやさしく微笑みながらセリーナを森の中へと案内した。

グリーンウッドリングの森はとても広かった。

生い茂る木々の間には、人々が通った形跡の残る小道がいくつも続いていた。

もともと道がなかったところも、人が通り過ぎるたびに自然とできた道だった。

ちょうどそのとき、銃声が鈍く響いた。

狩猟の音だった。

セリーナが言った。

「隣では盛んに狩りをしてるみたいですね。狩猟の季節なんでしょうか?」

「たぶん今日はこのあたりで狩猟があるんでしょう。今の時期、イノシシや鹿を捕まえないと、冬の間に村人が苦労するんです。」

「そんなところを歩いていて、事故とか起きたりしないんですか?」

「心配しないで。音が近くで聞こえても、実際はとても遠いところから聞こえるものよ。」

司書はこのようなことに慣れているのか、気にする様子もなく森を進んだ。

頻繁に出入りする人が大丈夫だと言うので、セリーナも心配を手放した。

司書の後をついて歩きながら、セリーナは周囲を見回した。

昼間だったが、木の隙間から差し込む日差しはまるで星明かりのように美しく、景色はとてもきれいだった。

しばらく歩くと、遠くに倉庫のようなものが見えた。

「ここですよ。」

司書は穏やかに笑いながら、倉庫の扉を指さした。

「倉庫、結構大きいですね?」

「これやあれやと色々入っているから。」

司書が鍵で扉を開けると、むわっとした古びた本のにおいが漂う。

昼間にもかかわらず、倉庫の中は薄暗かった。

セリーナがそわそわしている間に、司書はランプに火を灯した。

本が乱雑に積まれていた。

司書はさっとはしごに登って、上の方から一冊の本を取り出した。

「ここにあったわ。」

「思っていたより厚いですね。」

「プレゼントです。」

「私、いつも司書さんからもらってばかりな気がします。」

「お嬢さんがとても可愛らしいから、何かしてあげたくなるのよ。」

司書はにっこりと笑いながら、遠慮しないでねと優しく言った。

セリーナは感謝の気持ちを伝え、本をカバンにしまった。

そしてちょうど倉庫から出ようとしたそのとき――

「きゃっ!」

司書が足を踏み外して転び、本棚にぶつかった。

その拍子に本棚がぐらりと揺れ、壁の片隅にかけてあったランタンに火がついた。

パチッ—!

火が一瞬にして本に燃え移り、燃え上がり始めた。

司書は驚いて近くにあった水の入った容器で火を消そうとしたが、燃えるものが多い倉庫だったため、火は簡単には消えなかった。

司書は困ったような声で言った。

「これはまずいですね。お嬢さん、とりあえず外へ—!」

司書が慌てて叫んだが、セリーナは息を切らしながら体を小刻みに震わせるばかりだった。

異常な事態だった。

火を見た瞬間、反射的に息が詰まるような感覚に襲われた。

前触れもなく突然息ができなくなった。

息苦しさで目に涙がにじみ、視界がぼやけた。

まるでトラウマを抱える人のように、ひどく動揺している様子だった。

司書はセリーナの様子がおかしいことに気づき、すぐに彼女の手をつかんで引っ張った。

「いけない、時間がない。早く出ないと……!」

司書はセリーナを連れて倉庫の外へと急いで走り出し、倉庫は燃え上がり始めた。

「深呼吸して!息をして!」

司書はしゃがみ込んで、息ができなくなっているセリーナの背中をさすった。

燃えている倉庫よりも、今は意識を失いかけているセリーナの呼吸の方が大事だった。

「はっ……はっ……っ、ふぅ……」

倉庫を出ると、セリーナの呼吸は少しずつ落ち着いてきた。

その間、倉庫は火の海となり、森には濃い煙がもくもくと立ち込めた。

このままだと森全体が丸ごと燃えるかもしれず、司書は足を踏み鳴らした。

「とにかく他の場所に助けを要請しますので、お嬢さんは森から出てください!」

司書は慌ただしくどこかへ走って行った。火の手が簡単に収まりそうになかったため、他の人々に助けを求めようという判断だった。なにしろ工房の私有財産の一つである森が燃えてしまえば、司書の運命も終わりなのだ。

司書は救援を要請すると言い残し、セリーナを置いて姿を消した。

それにより、セリーナは炎を背にして息を荒げた。

心臓がいまだ異常なほど早く鼓動し、呼吸も再び荒くなった。

火の手を見た瞬間、彼女の思考は停止した。

思い出せない何かが、彼女の脳を強く刺激しているような感覚だった。

そのときだった。

「うっ!」

突然、額の傷跡がズキンと痛んだ。

セリーナは額を押さえながらうめき声を漏らした。

涙で濡れた顔は苦痛に歪んでいた。

いつできたかもわからない傷跡が疼いた。

まるで忘れたはずの記憶を無理やり呼び起こそうとするかのように。

「ごほっ、ごほっ!」

セリーナは気力を振り絞ってその場から逃れようとした。

このままその場にいれば、近くの森に火が燃え移り焼け死んでしまうかもしれなかった。

しかし、まるで足に鎖でも巻き付けられているかのように、足取りは重かった。

ついに力尽きてその場にへたり込んでしまった。

このまま何もできずに死んでしまえば、また最初に戻ってしまうのだろうか?

セリーナはがっくりと肩を落とした。

今回はうまくやれると思っていたのに、こんなにも無力だったとは──。

こんなふうに死ぬなんて。

死にたくはなかった。

今回は本当に皇帝を助けられると思っていたので、なおさら生に未練が残った。

ちょうどセリーナが意識を失いかけたそのときだった。

「セリーナ!」

馴染みのある声がまるで幻聴のように聞こえた。

『アジェイド?』

セリーナは視界がぼやける中で、かろうじてその名前を思い出した。

しかし、そんなはずがない。

アジェイドがどうしてここにいるというのか。

セリーナは死の直前に見るはずのありえない幻覚や幻聴だと考えた。

未練があるからこそ彼の顔が見えたのだろうと。

ついに集中していた意識が途切れたその瞬間だった。

激しく燃え上がっていた倉庫の火の手が一瞬にして虚空に吸い込まれるように消えた。

それは自然に消えたのではなく、魔法だった。

 



 

アジェイドはそわそわしながら狩りに夢中になっていたせいで、行動を外れてしまった。

すぐ近くにいたはずが、気づけば道も分からなくなり、同じ場所をぐるぐる回っていた。

見えるのは木々と草だけ。

銃声も遠のいていくように感じられ、アジェイドは少し不安になった。

「くそっ、ここは一体どこなんだ……」

セリーナが隣にいたら、きっと「そわそわしてるから罰が当たったんですよ」と言って驚いただろう。

アジェイドはセリーナのことを思い出して、静かに笑った。

そのとき、森の奥から焦げた匂いがふっと漂ってきて、鼻をひくつかせた。

匂いのする方向に目をやると、黒い煙が立ち上っていた。

近くで火事が起きているようだ。

アジェイドは煙の方向を見つめた。

もともと、公爵家の私有地が燃えていることなど気にも留めなかっただろう。

むしろスカッとするとでも言って喜んだかもしれない。

けれど──

『よかったです。森の道がとても綺麗で、最近もよく行ってます、一人で。』

「……」

アジェイドは、ふとセリーナが以前に言った言葉を思い出し、胸の奥がチクリと痛んだ。

あの方向は公爵城に近い散歩道の方面だった。

もしセリーナが火事に気づかず散歩していたのだとしたら?

下手をすれば、火事に巻き込まれて死んでいたかもしれないという考えが頭をよぎり、背筋がぞっとした。

『まさか、とは思うが。』

アジェイドは漠然とした不安を払拭しようと、火の上がっている方向へ足を運んだ。

火事であれば自分の管轄内のことなので、すぐに消してから道を探し直すつもりだった。

ちょうど火元に差し掛かったときだった。

「セリーナ!」

燃え盛る小屋の前に、セリーナがうずくまって泣いていた。

どこかが痛いのか、その顔は青白くこわばっていた。

なぜ炎の前で呆然と座っているのか、アジェイドには理解できなかった。

額を押さえているところを見ると、どこかを怪我したのは確かだった。

セリーナはアジェイドの呼びかけに顔を上げたが、虚ろな目は彼を認識しているようには見えなかった。

アジェイドはすぐさまセリーナの元へ駆け寄り、同時に手を伸ばして燃え盛る小屋の火を一気にかき消した。

「セリーナ!しっかりしろ!」

アジェイドが彼女を揺さぶったが、彼女の目は開かなかった。

さらに──

「ちくしょう、息をしてないじゃないか!」

アジェイドは彼女が無呼吸の症状を見せているのを見て、歯ぎしりした。

このままでは本当に死ぬかもしれなかった。

アジェイドは迷うことなく気道を確保した後、セリーナに人工呼吸を試みた。

 



 

 

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