こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
今回は33話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
33話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- バレンタイン王子
水路に向かい合ったまま続く曖昧な沈黙を破ったのはクラリスだった。
「私はクラリスだよ。あ・・・」
クラリスは同年代の少年に気楽に話そうとしたがやめた。
どうしてかは分からないけど、それではダメだという気持ちが強くなったのだ。
「・・・」
勇気を出した自己紹介にも少年は答えがなかった。
「ぶつかった所は大丈夫ですか?星が見えるように痛かったのに」
クラリスは自分のまだひりひりした頭を手のひらでこすりながら、苦笑いする。
少年は特に反応がなかった。
いや、表情がしわくちゃになっているのを見ると、まだ怒っているようだ。
(すごく痛かったみたい)
こういう時はどうすればいいんだろう?
悩んでいたクラリスは、先日読んだ話の本を思い出す。
そこでは子供が怪我をすると傷の上に「病気にならないで、ふう〜」と言って風を吹いたりもした。
クラリスは突然水路から立ち上がり、少年の前に歩み寄る。
その後は少年が後ろに退く間もなく、風をいっぱい入れたふっくらとした頬を彼の頭の上に傾けて息を吹きかけた。
「病気にならないで、ふう〜」
一瞬少年が顔をしかめて顔を上げる。
その後、とうとう初めて口を開いた。
「・・・頭がおかしいのか?」
綺麗な声だ。
「おかしくありません」
クラリスはまじめに答え,しばらく自分の頭頂部をいじった。
「まだちょっとヒリヒリするんですけどね」
「はあ・・・」
少年は呆れた顔でクラリスを脱みつけ、服をはたいて席から立ち上がった。
「あなたここで私を見たと言えば殺してしまうことができる」
殺してしまうなんて。
それはあまりにも恐ろしい脅迫だったので、クラリスは一瞬言葉を失ってしまった。
(そういえば・・・)
クラリスは少年を初めて見た時から気楽に話すことができなかったが、今はなぜかその理由が分かるような気がした。
少年はあの方とかなり似ている。
『その子が18歳の誕生日になる日には、首を切って私に持って来なければならない』
この土地の主人のことだ。
「確かに」
クラリスが黙って見ていると、彼はため息をつきながらうつむいた。
「誰かもわからないのに、話すこともできないかな」
なんだか自嘲的に聞こえる言い方だ。
クラリスの耳には、なぜかその言葉が自分を知ってほしいように聞こえたりもした。
(でも、本当に誰だかわからないもん)
ただ王様とよく似ているということしか。
その時だった。
「・・コオ。」
依然として髪の毛の間に隠れていたモチが小さな声で話をした。
その話を聞いてから、再び眺めた少年のシャツの襟の下に特別なペンダントがあることを分かった。
濃い青色の石が装飾で埋め込まれたのだが、クラリスは一目でそれが「物語を聞かせる石」だと、いうことを知る。
「それは・・・!」
クラリスは礼儀を忘れて彼の襟を指差した。
しかし、少年はもう用事はないかのように薄情になるほど振り向いてしまう。
その時だった。
「バレンタイン王子様!」
クラリスは少年の名前を大声で呼んだ。
バレンタイン・アシュトン・サッパーズ。
先王死去直前に生まれた現王の幼い弟で、マクシミリアンのもう一人の異母兄弟。
もちろん、このような情報をクラリスがあらかじめ知っていたわけではなかった。
彼女はサッパーズ王室についてよく知らなかったので。
これを教えてくれたのは王子のペンダントであり、髪の毛の間に隠れていたモチがその話を聞いて静かに教えてくれたのだ。
「少年はバレンタイン王子と呼ぶと嬉しく反応するんだって」と。
しかし、そのアドバイスは半分は正しく、半分は間違っている。
バレンタイン王子は確かにクラリスの呼びかけに「反応」した。
そびえ立つ場所に立ち止まったくらいだから。
しかし、彼女を振り返る時、喜ぶ表情をするところか、むしろ警戒する目で眺めるだけだった。
まさにシェリデン邸の外壁がクラリスに接する時のようにだ。
「私をどうやって突き止めたの?」
この質問に王子様のペンダントが教えてくれました、とは言えなかった。
「ただ・・・知ってます」
特に文句を言うことがなかったので、クラリスは口ごもって適当に答える。
「は」
すると少年はさらに怒ったように、顔がばっと赤くさえなった。
(王子様が私を殺そうとするのなら、どうしよう?)
王家の人なら莫大な権力を持っているはずだ。
クラリスはなぜか怖くて目をぎゅっと閉じて、同時に耳元でモチがささやく音が間こえてきた。
「こう(大喜びの様子だから誤解しないで)」
「・・・うん?」
喜んでいるって?
その言葉に勇気を出して頭を上げてみたが・・・少年は赤や青といった顔をしたままクラリスを鋭く見下ろしただけだった。
楽しそうな様子はどこにも見当たらない。
(モチ、本当に?)
クラリスが心の中で疑っていることが分かったのか、再びささやく答えが戻ってきた。
「こう(ここ6ヶ月以内にこんなに明るい姿は見たことがないんだって)」
・・・一体この6ヵ月間、どんな人生を送ってきたのだろうか。
クラリスは少年を見上げながら想像しようとした。
(分からない、目元が怖い)
しかし、失敗した。
「あなた」
「・・・はい!王子様、ヒック」
クラリスは突然返事をしてしゃっくりが出てしまった。
「公爵夫人の下女なの?」
「え?ヒック」
クラリスは聞き返す言葉の後にノーと答えようとしたが、しゃっくりがしきりに言葉を妨害しする。
「夫人はこんなに子供を下女として使うのか?まあ、とにかくよかった。ただでさえ気になることがあったんだけど」
「いえ、ヒック」
弁解の余地もなく、またしゃっくりが出て誤解は深まってしまった。
「王子様!どこにいらっしゃいますか!」
その時、遠くから彼を探す誰かの声が聞こえてきた。
バレンタイン王子は急いでクラリスを連れて木の洞窟の下の水路に入って身を隠す。
「ヒック」
「あなた、明日もここに来て。分かった?」
「え?ヒック!」
「来なければ本当に殺してしまうことを知って・・・!」
少年が片方の拳を突き出しながら渡した言葉にクラリスは真っ青になって、素早くうなずいてしまった。
「こ、殺さないで・・・ヒック!」
「うん、おとなしく出てきたら助けてやるよ」
彼はにっこりと微笑んだが・・・。
それは楽しそうに見えるところか、なんだか怖く見える笑顔だった。
クラリスが驚いているのを見て、ようやく彼は満足そうにすぐに水路を出ていく。
クラリスは彼が水路にしゃがんだまま姿を消すのをじっと見ていた。
「怖い人みたい」
「こう(君のことが気に入ったんだって。小さいくせに目は高いね)」
「ひょっとしてその石が何か間違っているのでは?」
「こう(最近思春期だからだって。それしても敢えて誰を狙っているの?)」
モチがぶつくさをしている間に、クラリスは水路を這って再び別宮の庭の中に戻った。
幸い彼女の小さな逸脱はばれなかった。
クラリスは再び庭の中を探索はしたが、さきほど会った王子様が気になって思う存分遊ぶことはできなかった。
夕方になると、公爵が謁見を終えて帰ってきた。
母親に病院で会った公爵夫人も離宮に戻った。
彼らはクラリスがどんな一日を過ごしたのか質問をしたが、少女はバレンタイン王子について話すことができなかった。
「言えば放っておかない」という彼の脅迫のためでもあり、一方では彼に再び会うためには、なぜかそうしなければならないような気がしたのだ。
彼の誤解を解かなければならないから。
代わりに部屋に戻った後は、他の日のようにノアがプレゼントでくれた赤い石をじっと包み込んでバレンタインに関する話をした。
「とても美しい少年だった。怖かったけど」
[・・・]
「なぜ私にもう一度会おうと言ったのかな?」
[少女、他の話はないのか?]
「うん?」
「他の少年の話を間いていると、生理的な次元で不快感を感じるな]
「コウ(鉱物に生理的な次元はないよ、バカ)」
[外来の石は沈黙するように。これは少女とノアの問題だから]
「こう(クラリスとあの猫の子を一つの問題にまとめるな!)」
モチはひどく怒ってベッドの上でびょんびょん跳ね上がり、砂利でがらがらと散らばって降りた。
(不快感という言葉を間いて思い出したんだけど)
彼らの会話を聞いていたクラリスは、ベッドでくるりと体を横にした。
(今日の夕方は、公爵様もあまり機嫌が悪そうに見えたよ)
それは公爵夫人が首都中央病院に行ってきた話をしてくれた時だった。
『伯爵領から遠い旅をされましたが、ウッズ夫人は不便ではなかったでしょうか?』
公爵が最初に渡した話に彼女がにっこり笑いながら答えた。
『はい、幸いなことに、ハリーが母親を一緒に連れてきてくれました。ああ、ハリーは親友です。久しぶりに会ってどんなに嬉しかったか・・・』
男であることが明らかな「ハリー」という名前が聞こえた時、クラリスははっきりと見た。
公爵様の表情が固まるのを。
それももしかして赤い石が話していた「生理的な次元の不快感」なのだろうか?
「よく分からない」
とにかく公爵様は数秒もしないうちに、いつもと変わらない物静かな姿で帰って来たのだが。
「今日はどうしてみんな気分が悪いんだろう?」
クラリスはハンサムなバレンタイン王子と遭遇しただけなのに。
公爵夫人は長年の男友逹と再会しただけなのに。
「本当におかしい」
バレンタイン王子との遭遇。
彼の本心は本当に喜んでいたのでしょうか?
マクシミリアン公爵の表情は嫉妬でしょうね。