こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
今回は37話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
37話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- バレンタイン王子⑤
しばらく音に耳を傾けていたマクシミリアンが再び離宮の入口に向かうのを眺めながら、バレンタインは安堵のため息をついた。
「・・・バレると思った」
昨日の彼はクラリスとの約束を無視した。
それは当然のことだ。
嘘を言い放つ女の子とまた会いたい気持ちは微塵もなかったから。
それでも大事にしている帽子を返せなかったことは何だか気になっていたので、彼は朝に起きるや否やすぐここにやってきたのだ。
庭の片隅にクラリスの帽子をそっと乗せて帰るつもりで。
彼はすぐに近くの庭の飾りに帽子をかけておいた。
「さようなら、嘘つき」
よけいな気持ちでそうあいさつして振り返った。
なのに。
「はっ!」
いつの間にか、彼の前には巨大な男の体がしっかりと構えていた。
びっくりしたバレンタインはすぐに顔を上げる。
「シェ、シェリデン公爵!」
少し前に遠くからしか見ていなかったシェリデン公爵が彼の目の前に立っていた。
「帽子を返しに来たんですね」
ただ低い声でそう言っているだけなのに、バレンタインはなんだか怖い気がした。
一生不快に思っていた相手が目の前にいるからかもしれない。
一方、シェリデン公爵は、自分が誰かも知らないに違いなかった。
そうでなければ王室を憎んでシェリデンに追い出された男が、膝まで曲げて視線を合わせるはずがないからだ。
「バレンタイン王子様」
「・・・」
しかし、公爵の口から出た正確な呼称に彼は大変驚いてしまった。
「わ、私を・・・知ってる?」
「はい、とても幼い時にお会いしました。お会いできない間に本当に立派に成長されましたね」
立派だなんて。
その甘い褒め言葉にバレンタインは思わず笑ってしまう。
相手がまさにそのシェリデン公爵であることも忘れてしまったからだ。
しかし、彼はすぐに気を取り直して警戒するように一歩後退した。
「う、裏切り者の褒め言葉に私が喜ぶと思うのか!?」
彼は飾りにかけておいた帽子を引っ張り、マクシミリアンの肩に放り投げる。
「嘘つきのちびにありがたいと思え!私が恵みを与えたから」
これに対し、マクシミリアンが返事なしに帽子だけを取って席から立ち上がった。
もしかして殴ろうとしてるのかな?
怖くなった彼は、素早く両腕を頭上に持ち上げる。
「ああっ!わ、私は怖くない!全然怖くないって!」
「私は裏切り者ですが、クラリスは・・・」
落ち着いて戻ってきた答えは、途中でぎこちなく止まった。
バレンタインはそっと腕の間からマクシミリアンを注意深く見上げる。
「・・・う一ん、私が勝手に結論を下すのもおかしいですね」
バレンタインは公爵が差し出す帽子を思わず受け入れた。
公爵は軽くうなずいてから離宮の入り口に向かい始める。
「あれ、どこに行くの?」
彼が帽子を持ったまま尋ねると、立ち止まってマクシミリアンが振り向いて答えた。
「借りた物は直接返したほうがいいんじゃないですか?」
「え!?」
「もちろんお望みでなければ、ついてこなくてもいいです」
そこまで話したマクシミリアンは再び振り向いた。
その堂々とした歩き方は、バレンタインが彼についてくると確信しているようで、酷くプライドが傷ついた。
ベッドの上にじっと座っていたクラリスの白い額の上に公爵の手のひらが上がってきた。
たこと傷が多い手だが、クラリスはそこから染み出てくる温もりが気持ち良くて溶け落ちるように微笑んだ。
「ほら、もう熱は出ないでしょう?」
「そうだね」
「申し上げたじゃないですか。私は絶対に病気になったりしません。昨日はしばらく体の調子がおかしかっただけです」
昨日しばらく微熱を帯びてはいたが、それは外で一瞬居眠りをしてしまったせいだ。
(私は絶対に病気になりませんから)
クラリスは公爵に向かってへらへらと笑いながらそう思った。
こんな手厚いもてなしを受ける罪人があえて病気になるのは、主題も知らないことだろうから。
「でも、今日一日外での活動は禁止されるよ、クラリス」
それは少し残念だったが、クラリスはすぐにうなずいた。
彼の言うことをよく聞くべきだということは、初めてシェリデンに来た時から約束されていたことだから。
「はい、公爵様」
「そして、あなたのところにお客さんが来た」
そう話す公爵の後ろに、さっきから他の所だけを見たまま斜めに立っていたバレンタインが見えた。
「おやつを持ってきてくれと伝えてくる」
公爵はそう話しながら席を外す。
部屋の中に二人きりで、しばらく気まずい空気が彼らの間を流れた。
(何て話を始めるの?)
クラリスはバレンタインのシャツの襟の下に濃い青色の装飾石があるのを見た。
(あの石に聞いてみようか?)
モチを起こせば、すぐにバレンタインが何のつもりでここに来たのか知っているのかと尋ねることができるはず。
クラリスはそっとモチの入ったポケットに手を伸ばした。
その瞬間にはバレンタインがぎくりとして背後に隠しておいた帽子を直して握るのが見えた。
「私の帽子!」
クラリスが驚いて叫ぶと、彼はようやく視線を向ける。
「帽子を返しに来たんですか?」
「えっと・・・」
「とても嬉しいです。返してもらえないかと心配したので」
「そ、そうだったの?」
「使用人に頼まずに自分で持ってきてくださるなんて、さすが王子様は優しいですね」
「こんなつまらないことをしてくれる使用人はいない・・・。いや、か、借りたものを直接持ってくるのは当然のことだよ!」
クラリスが両手を前に出すと,彼はおずおずと近づいて帽子を返した。
クラリスは帽子を抱き締めてしばらく顔をつける。
「何だかいいにおいがします」
「・・・ふん」
「ああ、私があえてベッドに座って王子様を迎えましたね。無礼をお詫び申し上げます」
「辛いと聞いている」
「辛くありません。見てください!」
クラリスは彼の方に頭を突き出し、両手で額を覆った髪をばっさりとかき上げた。
「・・・?」
すっきりと現れた顔を眺めながらバレンタインがいぶかしがると、クラリスが素早く催促する。
「もう私の額は熱くありません」
「それを今私に確認しろって?」
「はい!」
クラリスは依然として額を高くしたまま答えた。
「ど、どうして私が!?」
「それは王子様が私を心配するような目で見ていらっしゃるからです:
彼がクラリスを心配していることは、特に石に付かなくても分かるような気がした。
帽子を返す時に見せてくれた表情と目つきのおかげだ。
「だから確認してみてもいいですよ」
クラリスが再度勧めると、彼は何か気に入らないことでも触るように手を伸ばして額の上に置いた。
事実、ほとんとすれ違うも同然だ。
「な、なんともないね」
彼がすぐに手を後ろに隠すと、クラリスは髪の毛をさらさらと下ろした。
「そうなんですよ。むしろ王子様の手がとても冷たくて私がもっと心配になりました。ここに座ってください」
クラリスはベッドの下の毛布を持ち上げながら彼に席を勧める。
もちろん、今までそうだったように、バレンタインはその誘いをぺろりと受け入れなかった。
呆れたという表情と狂ったのかという言葉を2回ほど繰り返した後になって、布団の中にすっぽり入って凍りついた体を溶かした。
(最初から楽に、受け入れてもいいのに)
クラリスは肩をすくめて、もう少し布団を彼に渡した。
同じ布団の中に誰かと一緒にいると、なぜかもっと暖かくなる気がする。
そこにロザリーが持ってきてくれたおやつはかごに入った冷たいみかんだった。
全てが完璧だ。
みかんはグレゼカイアの特産品。
それはとてもおいしい果物だから、戦争の時に「みかん畑は触るな!」という暗黙のルールがあったほどだ。
そのおかげなのか、それともグレゼカイアが新しいパースに編入され、生活が良くなったおかげなのか、今年はミカンが豊作だった。
そこに今やサッパーズは関税を払わなくてもミカンを持ってくることができた。
おいしくて安いみかんは首都のすべての城壁の内部で人気があるのだ。
「こんな庶民の果物なんて・・・」
でもそのためバレンタインはみかんが嫌いだった。
その上、マクシミリアン公爵が与えるおやつのようなものをぼんやりとすぐに受け取るつもりはなかった。
中に毒でも埋められたのか、どうやって分かるのか。
「美味しいですよ」
彼が食べないためか、クラリスは直接皮をむいたみかんを半分に割って彼に渡した。
「ふん、こんなことしたら私が食べると思う?」
しかし、甘酸っばいにおいが鼻をつき始めると、なぜか唾がごくりと飛んでいった。
「みかんなんか・・・本当に嫌いだ」
嫌いなものはすべてなくさなければならなかったので、彼は半分のみかんを丸ごと口の中に押し込んだ。
この嫌な奴ら!すべて私の体の栄養素にしてやる!
彼は口の中のミカンを飲み込む前に、すぐに新しいミカンをむいて食べた。
そのように浮かれてしばらく食べていたが、彼は一つの事実に気づく。
クラリスがその琥珀色の目を丸くしたまま彼をじっと眺めているだけだという事実だった。
「何だよ、なんで見てるんだよ」
「よく召し上がってよかったですね」
警戒もなしににっこり笑う姿を見ると、バレンタインが怒りが収まったと確信しているように見えた。
「どうしてこんなに図々しいんだ!」
やっとみかんを一つあげておいて自分の怒りが解けると信じるなんて。
「私は・・・まだ・・・」
あなたに腹が立った、この嘘つき!
公爵の四柱を受けて私を誘惑しようとしたんだよね?
バレンタインはそう話そうとしたのをやめた。
少し前にマクシミリアンの後を追って離宮に入ってきた瞬間を思い出したのだ。
シェリデンから来た鍛え抜かれた騎士たちは、誰でも公爵に忠誠と礼を尽くした。
彼を見上げる目つきと言葉遣いから尊敬と憧れが十分にうかがえる。
幼いバレンタインにもはっきり分かるくらいだ。
そこには事実上、幽閉された王子に対する無覗は少しもなかった。
騎士だけではなかった。
公爵に仕える使用人たちも、王室の本宮の侍従のように、礼儀正しく堂々としている。
彼らの前に立ったシェリデン公爵は「立派な大人」に見えた。
クラリスが話したように。
(もしかしたら、その話はすべて事実だったかもしれない)
一瞬思い出じたことを、彼は慌てて首を横に振って払いのけた。
そんなはずがなかった。
もしクラリスの言うことが正しければ、彼の母親が嘘つきだという意味だから。
「まったく!」
「王子様?」
「分からない」
「え?」
「だから!誰の話が正しいのか分からないんだ!」
彼は大声で叫び、ふかふかのベッドにおでこをもたせた。
くるくる回る考えは依然として結論が出てこない。
「何の話か分からないですが・・・王子様が直接確認して結論すれば良いのでは?」
「え?」
すぐ戻ってきた変な言葉に、バレンタインは突然頭をも上げる。
クラリスは小さなミカンのかけらを取ってもぞもぞと音を立てていた。
「誰の話が正しいのか分からない時は、その方法しかありません」
当然ではないかというように返ってきた話にバレンタインは斜めに笑った。
「話にならないことを・・・」
彼にとって母親の言葉は絶対的だ。
なぜなら、あの方はバレンタインを心から大切にしてくれる唯一の方であり、この地で最も偉大な者だから。
ところがそんな母親の言葉をそのまま信じず、あえてバレンタインが直接「確認」して「結論」を下せって?
「分からないとおっしゃったじゃないですか」
「・・・」
「そんな時は王子様が自ら答えを探すしかないんですよ」
それは・・・とても変な言葉だった。
それもそのはず、バレンタインの「答え」はすでに全て母親にあった。
褒められたら正しいこと。
気分に逆らってはいけないこと。
当然そのように生きなければならないと学んできたのに・・・。
今はクラリスの言葉にまったく反論できなかった。
「あなた・・・もし私があなたの嘘を明かしたらどうする?」
「え?急に私ですか!?」
クラリスはびっくりしながら答えた。
どうして彼を悩ませる主体が自分だという点は少しも知らなかったようだ。
バレンタインは少しイライラした。
自分は一昨日の夕方から今朝までずっとクラリスのことばかり考えていたのに!
「もしあなたが嘘をついたとわかったら、あなたを私の下女にするからな!」
「え?あ、あ、あ・・・」
するとすぐにクラリスの顔が真っ青になり始めた。
まるで嘘をついているところをばれたようにだ。
「何だ、あなた?やっばり嘘だったの?」
「あ、あの・・・あの・・・あの・・・私が嘘をついたのではないですが」
今まで堂々としていたクラリスが、たくさん肩をすくめて途方に暮れる姿を見ていると、なぜか可愛かった。
彼は自然に口元が上がろうとするのを無理やり押さえつけ、偉そうにする。
「やっばりお前が嘘をついたんだろう?」
「そうじゃなくて、王子様が私のことを誤解して、公爵夫人の下女だとおっしゃったじゃないですか。ですが、私は・・・」
まさか違うのかな?
「確かに、女中にしては部屋が豪華すぎるよね」
その上、公爵が直接訪ねてきて心配までしたのだから。
(もしかして公爵の娘?)
もしそうなら、クラリスは彼の家族という意味になる。
(・・・家族)
なんだかドキドキした。
(わ、私にこんなに可愛い家族がいたの?)
天井越しに彼の期待が沸き上がった。
バレンタイン王子のツンデレにニヤニヤしてしまいます!
クラリスとの会話は癒されますね。
マクシミリアンの娘と勘違いしましたが、クラリスは戦争捕虜だと伝えるのでしょうか?