こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
今回は36話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
36話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- バレンタイン王子④
「うそつき!」
自分の別宮に戻ったバレンタインは、荒々しく大声を上げ、ドンドンという音がするまでドアを閉めた。
『公爵様は皆の尊敬を受けます』
『公爵様夫婦はお互いに好きです。お二人が一緒にいると幸せになります』
そんなはずがなかった。
彼のお母さんが言わなかったか。
マクシミリアンは家族に捨てられ、寒い冬の城で一生を生きることになった罪人だと。
彼が別宮で数日間過ごすという話に、バレンタインは彼の悲惨な姿を目で見るために接近した。
たとえお母さんはそんな悪い人間と接触することは間違ったことだと言うかもしれないが・・・。
バレンタインは実際に彼の不幸を見ると、なんだかいい気分になりそうだった。
いや、確かにそうするはずだった。
「そうだったんだけど・・・」
やはり邪悪な公爵はバレンタインの存在に気づいていたようだ。
「あんな可愛い女の子をスパイとして送るなんて。いや、全然可愛くなかったけど!」
あんな子が丸い目を瞬かせながら公爵についていい話を聞かせてくれれば、バレンタインを懐柔できると思ったらしい。
「私を揺らせば王室の安定も揺らぐだろうから」
揺らぐ。
誰がそんな嘘に騙されると思う?
「幽閉された王子がみんなの愛を受けるはずがないじゃないか」
何よりもクラリスの言葉が事実ならば、今まで母親が言ってきた言葉が全て嘘だということになる。
それこそありえないことだ。
彼の母親は「王室のバラ」と呼ばれる高貴な人。
『明日・・・も来ますよね?』
バレンタインは少し前にクラリスが言った言葉を思い出して鼻を嗚らす。
作戦が失敗しそうだからまた来いというのか?
「誰が二度と会いに行くと思う?」
彼はかぶっていた帽子をベッドの上に投げつけ、かっと叫んだ。
今日に限って頭頂部がおかしいほど暑いと思ったら・・・。
彼はやっと自分が今までクラリスの帽子を使っていたことに気づく。
「・・・あ」
その瞬間、この帽子を貸して聞いた言葉が思い浮かんだ。
『はい、一番大事にしている帽子ですが大丈夫です』
クラリスがバレンタインと2度も会う仲。
マクシミリアンはライサンダーに会い、王家をだまして偽の花嫁を送ったダーリントン家の処分を決めた。
王は表向きは非常に寛大な処分を下した。
ただ、今まで彼らに送った「品位維持費」を返してほしいということだけだったからだ。
しかし、すでにすべてのお金を使い果たしてしまった伯爵家には、最大の災いが吹き荒れたわけだった。
結局、伯爵は家門の名誉と小さい領地をすべて王家に捧げてやっと罪のを赦免してもらうことができた。
身を横たえる家どころか、すぐに食事さえ解決しにくくなったダーリントン家は、お互いを責めてばらばらになる。
こうして、ただでさえ存在感が薄かったダーリントン家は王国で完全に忘れられるようになった。
ただ、今回の事件がブリエルに及ぼした影響は非常にすごかった。
いつも心配していた母親に会えるようになり、医師から病気の経過を周期的に聞くことができるようになったのだ。
今はただ空に向かって母親の健康を祈り、漠然とした時間を過ごさなくてもよかった。
そうして彼らが首都に来て4日目の朝。
ブリエルは日が昇る前に立ち上がり、朝食も取らず急いで上着を着る。
あわてて離宮から出ると、ちょうど寝返りを打っているマクシミリアンと庭でばったり出会った。
「ああ、こんにちは、公爵様」
ブリエルはすぐにお辞儀をした。
すぐ彼も同じ礼法で挨拶をしてくれた。
「おはようございます」
マクシミリアンは長い髪を高く上げて結んだ・まま、普段より軽いシャツとズボン姿だった。
運動を終えたばかりのせいか、汗に濡れた上着が彼の体に少しくっついている。
「寒いと思うのですが」
「シェリデン人は首都の冬を寒いとは言いません」
そう話す声からは妙な自負心が漂った。
まるでシェリデン出身の人たちのようにだ。
「しかし、あなたは暖かく着なけれはなりません」
「私もシェリデンの人間ですよ?」
理由は分からないが、ブリエルがこのように話す時、マクシミリアンがしばらく立ち止まる。
(・・・私が言い過ぎたかな?)
これでは彼の妻の地位に未練があるように見えたかも知れない。
(それは未練がないわけではないけど)
先月ブリエルが悟った片思いの気持ちは依然として熱烈に進行中だった。
「暖かい格好をします。どうしても私まで体調を崩したら困りますからね」
「はい、気をつけたほうがいいですね」
「ところでクラリスはとうして水路の下で眠っていたのでしょうか?」
昨日はクラリスが庭を探検した3回目の日だ。
長い棒を持って水路に沿ってびょんびょん跳ねていた子供は、ある瞬間からはその姿が見えなかった。
クラリスが木の後ろに隠れて穴を掘ることもしばしばあったので、最初は騎士たちも大したことではないと思った。
しかし、普段より帰宅時間が確実に遅くなると、彼らは直接クラリスを探しに出て、木のトンネルの下の水路でうずくまって眠ってしまったクラリスを発見したのだ。
体がかちかちに凍り、昨夜クラリスは軽い体調不良まで患った。
「う一ん・・・」
マクシミリアンはしばらく悩んだ後、少しぎこちない口調で答える。
「多分、遊びをしていて眠ってしまったのでしょう」
「大変でなければ幸いですが。水路の下で発見したと聞いて心臓がドキドキしました」
「3番目の壁の内部は、子供たちが過ごすのに良い場所ではありません。安全と実用よりも美しさを優先して建てられたのだから」
ブリエルはなぜか心の片隅が重かった。
「すみません。私が毎日お母さんのところに行くからクラリスのこと気にしなくて・・・」
「いいえ」
公爵は軽く手を上げて彼女の謝罪を阻止する。
「シェリデンでずっとお母さんを恋しく思っていたのではないですか。ああ、私があまりにも長い間捕まえましたね」
彼は一歩退いた。
「気をつけて行ってきてください」
「あ、あの・・・こんなお願いをするにはちょっと厚かましいですが」
ブリエルは両手をそろえてマクシミリアンを見上げる。
「一晩だけ・・・泊まってもいいですか?」
「・・・」
「必ずしも今夜そうするというわけではありません。ただ首都に泊まる間一日ぐらいはお母さんと一緒に・・・寝たいからです」
彼女自ら考えても図々しいお願いだということは知っていた。
それでも一晩くらいは必ず一緒にいたかった。
なんだかお母さんもそれを望んでいる様子だったし。
焦って眺めていると、すぐに彼は渋い顔で静かに口を開いた。
「彼は・・・」
「え?」
「あの・・・男のことです」
あの男?
いぶかしがっていたブリエルは、すぐに手を叩いてはつらつと答える。
「あ、ハリーですか?」
「・・・はい」
ハリーはブリエルが幼い頃から一緒に伯爵家で働いてきた友人で、兄妹同然の関係だった。
「ハリーがどうしたんですか?」
「いいえ、何でもありません。聞かなかったことにしてください」
「え?」
「もちろんお休みになってもいいです。何よりも、これはあなたが私に許可を求めることでもありません」
公爵はブリエルを待っている馬車のドアを急いで開ける。
「・・・?」
一体さっきハリーについて何の話をしようとしたんだろう?
ブリエルは不思議そうな目で見たが、マクシミリアンはもう視線さえ合わせなかった。
マクシミリアンはブリエルを乗せた馬車を見て、大きくため息をつきながら頭を下げる。
少し前、マクシミリアンは「彼も病室で一緒に夜を明かすのですか」と聞くところだった。
一体どうしようとそんな馬鹿なことが思い浮かんだのだろうか。
ハリーという男性はありがたいことにウッズ夫人のそばに立っていた。
幼い頃から彼を息子のように面倒を見てくれた恩人だと言っていたからだ。
ところが、彼を「不便な存在」とみなす質問をするところだったとは・・・。
そもそもブリエルは自由に誰でも会って親しく過ごす権利がある。
もし彼女がハリーという男性とお互いに良い感情を持っているなら、むしろそれはよかった。
いつかこの結婚を無効にする時、少なくともあの男はブリエルのそばにいるのではないか。
一瞬、手から間こえてくる変な音に見下ろしてみると、練習用の剣についた小さな飾りが割れて床に落ちていた。
「丈夫なものだと言ったのに・・・」
どうしてじっと握っただけなのに飾りが壊れた?
なんとも不思議なことだと思って、彼は別宮に足を運んだ。
しかし、庭のどこかから聞こえてくる小さな人の気配に、彼はしばらく立ち止まる。
鋭い彼の感覚は一気に音のする方向に気づいた。
庭の水路の端。
ちょうど昨日クラリスが眠っていたところだった。
クラリスは風邪を引いてしまったのですね・・・。
マクシミリアンも無意識にブリエルを意識しているようです。
彼が水路の端で発見したものとは?