こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

93話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 贈る花④
「なあ、どうするつもりだ?」
深い感傷に浸る中、バレンタインが小さな声で突然問いかけてきた。
「何をどうするんですか?」
クラリスが左側にいた彼を振り返ると、彼は数歩前へ進み、夫人の後ろ姿を見つめていた。
「夫人が誤解なさったじゃないか!」
すぐ右後ろにいたノアが、バレンタインの腕を軽く引いた。
「クラリスは、夫人があまりに喜んでおられたので、違うとは言い出せなかっただけですよ。」
「……まあ。」
バレンタインは深く息を吐いた。
「ずいぶん気に入っていたな。」
「礼拝堂で見かけたときは、こんなに明るい方だとは思いませんでした。」
「そうだな、いつも憂いを帯びた表情をされていたからな。」
「だからこそ、私も真実を告げるのが難しく感じたのです。」
この邸宅のように、ずっと暗く沈んでいた夫人の顔に、久しぶりに明るい光が差していた。
その光を、自らの手で消せるものだろうか。
「仕方ないな。」
バレンタインはそう結論づけると、クラリスの肩に置いていた手をそっと下ろした。
「ひとまず求愛中ということにしよう。」
するとノアも、クラリスの肩に手を置き、賛同するようにうなずいた。
「私も適当に求愛中ってことにしようかな。」
求愛する騎士と、それに適当に応じる騎士を得たクラリスは、その場でぴたりと足を止め、立ったまま二人をじっと見つめた。
夫人のために小さな嘘をつくこと自体に強く反対するつもりはなかった。
しかし、それよりもっと根本的な問題があるのでは?
「こんな作戦、本当にうまくいくの?ノア、求愛について何か知ってる?」
「タラントゥラを求愛成功させた実績ならある。」
彼はあっさりとそう言い放った。
バレンタインがしばしノアを尊敬のまなざしで見つめたかと思うと、即座に彼の部屋へ走り、カッコいい蜘蛛を探して求愛の勉強をしようとしていた。
詩を取り替えたいというのは、決して不自然なことではなかった。
……だからこそ、侯爵夫人をさらに困惑させることになるのではないか。
クラリスの不安はますます深まった。
夫人は三人を応接室へと案内した。
座るとすぐに沈み込むソファも、長年この場所を守ってきた家具なのだろう。
ここもまた、セシリアが時間を過ごした場所であることは、容易に想像できた。
ノアとバレンタインはようやく自分たちを夫人に紹介した。
ノアはローブを着ていることもあり、自分が魔法使いであることを明確に伝えた。
しかし、バレンタインは自分が王子であることには触れず、クラリスと共に修道院で学んでいるだけだと説明したにすぎなかった。
長い間王宮を離れていた侯爵夫人は、バレンタインの正体に気づいていないようだ。
さらに、彼は準備してきたバラの花を彼女に差し出した。
「夫人に差し上げたくて持ってきました。」
「まあ……。本当はクラリス嬢に渡したかったのでは?」
その言葉に反射的に反応したバレンタインは。
「俺がそんな、あの路地裏の娘に花を……。」
とっさにそう口走ってしまった。
しかし、すぐに優雅な笑みを浮かべて失言を取り繕った。
「も、もちろん夫人が選ばれたならば、その……クラリスにも花を渡す資格が生まれるということですね。ぜひその栄誉を私にお許しください。」
そう言いながら、彼はさっと顎を上げてクラリスの方を見た。
まるで「どうだ、うまくやっただろう?」と言わんばかりの表情だった。
だが、クラリスはそんなふうには思っていなかった。
結局、彼らはただ顎を撫でながら視線を交わすばかりで、まともな答えは出てこなかった。
執事が茶を運んできた頃、バレンタインは再び席に戻った。
「では、質問させていただきます。」
侯爵夫人は姿勢を正して座り、クラリスの両側に座る二人の男性と順番に視線を交わした。
「クラリス嬢のどこが特に美しいと思いますか?」
最初の質問に、ノアとバレンタインは一瞬互いに顔を見合わせた。
クラリスの目には、二人がまるで視線で会話を交わしているように映った。
『お前、答えわかるか?』
『いや、そもそも答えって何だ?』
深いため息が漏れた。
こうなる予感はしていた。
彼らがクラリスの「特に美しい部分」を言えるはずがない。
そもそも、彼らは彼女を美しいと考えたことすらないのだから。
「まあ、たくさんありすぎて選べないってことですね。そうでしょう?」
しかし、誤解したままの夫人は、彼らが答えを躊躇しているのには別の理由があると考えているようだ。
クラリスは、ここは正直に話した方が良いのではないかと考えた。
最初の質問からつまずいたが、これから残る二つの質問はどうなるのか。
「えっと。」
クラリスが口を開いた瞬間、まるで示し合わせたかのように、両側から答えが飛び出した。
「素晴らしい手のひらですね。」
「綺麗に整った、程よいシワ?」
「………。」
クラリスは自分の手のひらをじっと見つめた。
ストレスのせいか、少し熱を持っていて、シワも深くなった気がする。
『いや、指先とかまつ毛とか、普通の答えがあるでしょう!?』
求愛する男性の中で、一体誰が相手の魅力ポイントとして手のひらや額のしわを挙げるものか。
だからこそ、夫人が怪訝に思うのも無理はない……。
「まあ、時代がずいぶん変わったようですね。私たちの時代には考えられない、とても斬新な返答ですこと!最近の若者は本当に独創的でいらっしゃるのね。私も学ばなくては。」
「あ、あの、夫人!学ばないでください!」
「何よりも、最近の若者にそんな妙な噂を広めないでください!」
クラリスは湧き上がる心の叫びを必死に飲み込み、何とかこの場をやり過ごした。
「では、二つ目の質問をいたしましょう。これは私自身がとても気になっていることでもあります。クラリスさんをお好きになったきっかけは何ですか?」
今度は、単純な答えで済む問題ではなかった。
クラリスは、ノアとヴァレンタインがどんな美辞麗句を並べるのかまでは予想していなかった。
ただ「一緒に過ごしているうちに好きになりました」といった単純な答えでなければいいのだが、とクラリスは思った。
「今回もまずノア君の答えを聞いてみたいですね。」
夫人の言葉に、ノアは驚き、慌てて仮面を指で触りながら落ち着かない様子を見せた。
まだ答えを完全に準備し終えていないことは明らかだった。
『内心、かなり焦っているだろうな……』
クラリスは心配そうにノアの顔を見た。
そして、視線が合った瞬間——
『あれ……?』
少し驚いた。
なぜなら、ノアは思いのほか真剣に考え込んでいるように見えたからだ。
この場には少し不釣り合いなほどの真剣な雰囲気が、仮面の奥から溢れ出ていた。
侯爵夫人もそれを感じ取ったのか、沈黙を守りながらノアを急かそうとはしなかった。
『つまりこれは……』
クラリスは依然としてノアを見つめながら考えた。
『わざと真剣に考えるふり……ではないよね?』
それはあり得なかった。
むしろ、ここを出た後にノアの演技力を褒めてあげなければならないと思うほど、本物のように見えた。
ついにノアが口を開いた。








