余命僅かな皇帝の主治医になりました

余命僅かな皇帝の主治医になりました【23話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「余命僅かな皇帝の主治医になりました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【余命僅かな皇帝の主治医になりました】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「余命僅かな皇帝の主治医になりました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

23話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 喧嘩②

「うう。」

そのとき、セリーナは深くため息をつきながら、肩をすくめた。

少し休めば良くなると思っていたのに、体調はどんどん悪くなっていった。

ぞくぞくと寒気がし、手足が冷たくなった。

『おかしいな……。』

セリーナは安楽椅子に体を沈め、脈を取った。

脈は不安定だった。

それに脇のあたりがじんわり温かくなった気もした。

冷凍庫の中にいるみたいに体は震え続け、体温ばかりが下がっていく。

『風邪かな?いや……でも、これほどでは……。』

セリーナは、どうしても診療所に行かなければならないと考え、椅子から立ち上がろうとしたそのときだった。

「あっ。」

その瞬間、頭がぐるぐる回った。

セリーナはめまいを感じ、ふらついた。

体を支えようとする余裕もなく、そのまま床に倒れ込みそうになった。

だが、床にたどり着く直前、動きがぴたりと止まった。

固い床ではなく、柔らかいシルクのような生地が顔に触れた。

鼻先に馴染みのある匂いが漂ってきた途端、緊張が一気にほどけた。

『……皇帝の奴、何があったんだ?』

胸の感触だけで誰かを判断できるほどだった。

セリーナは支えられたまま呆然と寄りかかっていた。

立ち上がらなければならないと分かってはいたが、体が言うことを聞かなかった。

「セ……!しっかりして……!」

狼狽したアゼイドが何か叫んでいる声が聞こえたが、セリーナの意識は徐々に薄れていくばかりだった。

『このまま気絶するのか。……よし、次に目覚めたら、まずは皇帝の首から絞めてやる。』

セリーナはまともでない考えを浮かべながら、かすかに笑った。

そしてそのまま意識を失った。

数分前――。

アゼイドはセリーナの部屋の前で、うろうろと歩き回りながら迷っていた。

入るべきか、やめるべきか。

連絡もなしに突然訪ねたことで、セリーナに怒られるかもしれない。

いや、それよりも喜ばれなかったらどうしよう。

そんな思いがぐるぐると頭を巡っていた。

だがここまで来た以上、引き返すわけにもいかなかった。

ただ戻るだけなのに、それもまた滑稽なことだった。

「そうさ、俺は心の広い皇帝だからな。」

アゼイドが大きくため息をつき、ぼやいた。

そして、彼はしらじらしく言った。

「おい、中にいるのか。」

「……。」

「中にいるのは分かってる。」

部屋の中から返事はなかった。

アゼイドはセリーナがわざと聞こえないふりをしているのだろうと推測した。

「返事しないなら、いるものとみなして開けるぞ。」

しかし、それでも返事はなかった。

アゼイドは嫌な予感がして、扉を乱暴に開けて中へと入る。

ひどく具合が悪いと言っていたが、もしかして倒れてしまったのではないかと心配になった。

その時、セリーナが起き上がろうとしたが、力尽きて倒れそうになった。

「セリーナ!」

アゼイドが驚いて彼女に駆け寄る。

近くでぐったりしているセリナを抱き上げたアゼイドは、さらに驚いた。

体があまりにも冷たかったのだ。

額には冷や汗がびっしり浮かび、寒さに震えるように体を縮めていた。

壁一枚隔てた向こうでは暖かい空気が漂っているはずなのに、彼女の体は冷え切っていた。

アゼイドは彼女の顔に手を当てて体温を測る。

まるで氷のようだった。

「しっかりしろ。なあ、セリーナ!」

アゼイドが呼びかけても、セリーナは反応せず、顔を彼の胸に押し付けているだけだった。

アゼイドは彼女の顔を持ち上げ、瞳孔を確認した。

彼女の金色の瞳孔の焦点が徐々にぼやけていった。

アゼイドの心臓は、彼女の意識が薄れていくほどに鋭く痛んだ。

「セリーナ!」

アゼイドはその場で呆然とするセリーナを強く抱き締めた。

顔には血の気がまったくなく、もともと白かった肌がさらに蒼白に見えた。

ふと、侍女が言っていた言葉を思い出す。

セリーナは彼の病気を治すために、毎晩眠らず看病を続けていたと。

最近ではアジェイドとの揉め事のせいで、ため息ばかりつき、どれほど辛かったことか。

「一体どれだけ無理をしたんだ!」

アゼイドは怒りに満ちたように髪をくしゃくしゃにかき乱した。

どうしても自分の体を後回しにしてしまう彼女に、胸が痛んだ。

『自分の体すら守れないのに、誰を救おうっていうんだ。』

彼はセリーナの腰と膝の裏に手を回し抱き上げた。

初めて抱き上げたセリーナの体は、驚くほど軽かった。

ベッドに彼女をそっと横たえた後、医者を呼ぼうと鈴の紐を引こうとした時だった。

「ううっ。」

セリーナがうめき声を上げながら、アゼイドの脇腹をつかんだ。

自然とアゼイドの視線が彼女の右側の脇腹へと向かった。

「!!!」

薄いツーピース型の服の内側、脇腹のあたりで、紫色の光がちらちらと揺らめいていた。

『これは……。』

マナの波動だった。

アゼイドは、彼女の脇腹を中心にあふれ出る紫のマナから目を離せなかった。

どこか見覚えのある光景だった。

まるで自分のマナコアが最初に目覚めたときのように——。

それは、かつて発現したときとよく似ていた。

『そういえば、発現当時の記憶がないって言ってたな。』

マナコアの紋章が発現するときには、激しい痛みが伴い、その衝撃は強烈に脳に刻まれる。

それなのに記憶がないというのは、まだ完全に覚醒していないか、覚醒途中で何らかの問題が生じた可能性がある。

アゼイドは、彼女がまだ覚醒していないと判断した。

つまりこれは、医者に見せたところで解決する問題ではない。

アゼイドは、言いかけた言葉をやめ、彼女の頬に手を添えた。

そしてふと思い出す。

以前、彼女と争った最中、彼女にだけ密かに説明した内容を。

『当分の間、体内のマナを通じた診察は控えたほうがいい。』

『急にどうして?』

『もともとかなり危険な治療法だったんです。副作用があるかもしれません。』

『副作用?』

『ええ。確実ではありませんが、悪化すれば生命に危険を及ぼしたり、体内のマナ凝縮現象が起きる可能性もあります。』

『……。』

『幸いにも、肺と全身のマナの相性がうまく合っていたので、これまでは副作用が出ませんでしたが、万が一に備えて気をつけてください。』

『相性がよかったって?』

『ええ。とにかく、マナを用いた診察に関しては秘密にしてください。特にノクターン卿には。』

『ノクターンと別で会ったのか?』

『実はノクターン卿に助言をもらいたくて、外出していたんです。』

アゼイドは、ようやく彼女の外出の理由がノクターンとの面会だったと理解した。

もっと問い詰めたかったが、冷え切った関係だったため、あのときは何も言えずにやり過ごしたのだ。

『どうやら、その副作用は本人に出たみたいだな。』

アゼイドは、セリーナをじっと見つめた。

体力が落ちていることから推測すると、もしかすると覚醒が遅れていたか、体内のマナが不足している可能性がある。

もしそうなら、早急な対応が必要だった。

アゼイドは無意識に、噛みしめた唇をわずかに強く押さえた。

「一応、先に伝えておくけど、これは医療行為だからな。」

切羽詰まったセリーナが聞く余裕もない中、アゼイドは彼女の許可を得た。

そして慎重に彼女の服をめくった。

やはり紋様が輝いていた。

各種痛みは医学よりも魔法学に関係があった。

まるで、刻印された術式が疼いているようだった。

運よく、アゼイドのような刻印の専門家がそばにいたことは、彼女にとって幸いだった。

少しでも痛みを和らげられるかもしれないのだから。

セリーナは痛みのあまり、しきりに手で脇腹を押さえようとした。

彼女の白い脇腹が赤く腫れそうになると、アゼイドは顔をしかめた。

放置すれば痕が残るかもしれないと思い、彼は片手でセリーナの両手を押さえつけ、もう一方の手で慎重に彼女の脇腹に触れた。

奇妙な緊張感が走った。

アゼイドの手のひらから青い炎がぱっと広がった。

空気中の純粋なマナを引き寄せて集め、青い炎へと変換したのだ。

紫色のマナが青い火を呑み込むように吸い込まれていく。

「うっ、痛っ……」

セリーナは、突然吸い込まれていくマナに目をぎゅっと閉じた。

「落ち着いて。大丈夫だから。」

アゼイドはセリーナの手を取ったまま、そっと背中を支えた。

自然と、二人の指がしっかりと絡み合っていた。

その華奢な身体の感触に、アゼイドはさらに緊張した。

『こんなに細かったんだな……。』

そんなことを思っている間にも、マナ同士がぶつかり合い、一瞬、閃光のような衝撃が走った。

その時──

「っ!」

アゼイドは突然、自分の体内のマナまでもが吸い取られるのを感じ、驚いて手を引っ込めた。

純粋なマナを流すための通路として使っていた体内マナまで吸い取られてしまったのだ。

『確かに注意していたはずなのに。』

考える暇もなく急いで手を離した。

もし離さなかったら、もっと多くのマナを奪われていたかもしれない。

ドキドキと心臓が早鐘のように打った。

アゼイドは目の前の光景にセリーナをじっと見つめた。

セリーナの呼吸は、いつの間にか穏やかに整っていた。

しわが寄っていた眉間も緩み、刻まれていた魔法陣のような紋様も徐々に落ち着いていった。

本来なら体内に直接マナを注ぎ込んではいけないとされているが、セリーナは不思議そうな顔をしていた。

『本当に相性がいいってことか?』

思い返してみれば、最初に彼女のマナが自分のマナコアに近づいたときも、微かに反応していた気がした。

もともと繊細なほうではあったが、少し違う感覚だった。

あの時は体調が最悪だったからだと思ったが、実際は感覚が鋭くなっていたのだ。

魔法学的な知識がなかったので、体内にマナを注ぎ込む行為そのものが危険だということも、セリーナに言われて初めて知った。

普通はセリーナのように体内のマナを自在に扱うことはできない。

せいぜい魔道具を使って外部から引き出して使う程度で、体内マナよりも純粋なマナのほうがずっと運用しやすい。

アゼイドが助けたのも、純粋マナを使っただけで、彼女の体内マナを使ったわけではなかった。

アゼイドは、セリーナをそっとつついた。

「おい、大丈夫か?」

セリーナは反応がなかった。

微かに体が動いているので、生命に問題はなさそうだった。

アゼイドは安堵のため息をつきながら、汗に濡れたセリーナの髪をそっと撫でた。

本当に、手を離すこともできず、じっとしているしかなかった。

アゼイドは血色が戻った彼女の顔を静かに見つめた。

「大丈夫みたいだな。」

そうやっと安心した瞬間だった。

セリーナがふいに彼の手を両手でつかみ、自分の顔の下に引き寄せた。

「……!」

思いがけないセリーナの行動に、アゼイドはそのまま固まってしまった。

自分の手を枕にして、穏やかな寝顔を浮かべる彼女を見て、手を引くこともできず、ただその場に留まった。

柔らかな産毛がアゼイドの手をくすぐり、彼女の温かな息遣いが、そよ風のように手の甲をかすめていった。

「これはちょっと危ないな。」

アゼイドはそっと手を握ったまま、もう一方の手でセリーナの口元をなぞった。

穏やかな顔で眠るセリーナは、まるで子どものように無邪気に見えた。

とても、皇帝に毒を盛り、治療を強制するような主治医には思えなかった。

そのため、アゼイドの胸は別の意味で高鳴り始めた。

 



 

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