こんにちは、ちゃむです。
「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
158話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 誰も傷つけない結末を目指して②
その時が来た。
アセラスは武道会場に向かう廊下をゆっくりと歩いていた。
全体に不穏な空気が漂う。
この場にいる人々の中で純粋に彼の訪問を祝おうと来た者は何人いるだろうか?
それが分かれば、彼は愚か者だと言えるだろう。
彼は後に続く灰色の髪の青年に尋ねた。
「準備はどのように進んでいる?」
「すべて終わりました。あとは待つだけです。」
アセラスはわずかにうなずいた。
対話はこれで終わった。
程度が適切だ。
見て聞く情報が多かった。
しかし青年は静かに彼に近づき再び尋ねた。
「彼らはどうやって知ったのでしょうか?」
「さあ、ルウェインがその背後にいると睨んでいます。」
(ああ、あの寄生するような人間が)
アセラスは顔をしかめる。
フレデリク帝国にも彼らと同じくらい参加者がいる。
詳細な内幕までは知らないが、それでも彼は知っていた。
突然彼らの背後に現れて策を弄し始めた黒幕がルウェインであることを。
まるで未来をすべて知っているかのように、逆手を取って巧妙に彼らの計画を阻んでいるということも。
(冷静を装っているだけで・・・)
以前はまったく動じない性格だった彼だが、その裏には違うものが隠されているのだろうか?
それとも、そばにいる青年は別の人物を候補に挙げている様子だった。
「あるいは裏切り者たちが全員呼び寄せられたのかもしれません。」
青年の目に鋭い光が宿る。
「やはり見つけ出して早く始末してください」
ケルシオンとアルゲルが本当にそうしたのだろうか?
アセラスには確信がなかった。
今となっては重要な問題でもなかった。
彼は適当に答えた。
「アルゲルが囚われている監獄は、おそらくブルーポート公爵が守っているでしょう。大変だと思いますが。」
「私たちはできます。」
青年は自信に満ちた口調で言った。
彼の背後には数名の信徒たちが立っていた。
彼らは全員、洗練された武器を手にしており、その武器ならどんな超越者でも一撃で倒せると信じていた。
アセラスは彼らの慢心を理解していた。
しかし、それを指摘する前に耐えがたい頭痛が彼を襲う。
彼は眉をひそめて言った。
「可能な限りメアリー・ブルーポートと接触せず、暗器と毒を使って対処してください。」
「ありがとうございます、聖下。聖下の恩寵を。」
アセラスは大きくうなずき、わずかに力を込めて青年の頭に手を置いた。
すると、すぐに青年の目が黄色に輝き始めた。
アセラスは再び前へとゆっくり歩を進める。
おそらくこれが、1年以内に公式にフレデリク帝国を訪問できる最後の機会だろう。
アセラスも、自身が衰弱していることを認識していた。
もし彼に少しでも時間があれば、未来を整える手助けも可能だったかもしれない。
しかし今回、何としてもセドリックを倒し、ダリア・ペステローズを連れていかなければならない。
なぜなら、貴族たち全員に分配した後に残る彼の寿命は奇跡的に2年ほどしかないからだ。
そして、ダリア・ペステローズなしでは圧力に耐えられる時間はさらに短いだろう。
だからこそ、今回は彼にとって最後のチャンスだった。
しかしその前に・・・。
彼は最後の希望を捨てていなかった。
もしかしたらダリアが彼を救ってくれるかもしれない。
なぜなら彼女だけが「新たな存在」だからだ。
「新たな存在?」
彼は眉をひそめた。
自分の考えさえも理解できなかった。
最近、彼はこのような不可解な経験をよくするようになっていた。
しかし、彼はすぐにその考えを振り払う。
・
・
・
侍従たちが無道会長の扉を勢いよく開けた。
その開かれた扉の中から、アセラスがゆっくりと歩み出てきた。
瞬間的に無道会長の雰囲気が変わった。
教皇の法服をまとった彼には、もはやかつて侍従だった面影は見られなかった。
背が高く、優雅で洗練された態度、疲労に覆われながらもどこか神秘的な雰囲気を漂わせる美しい顔立ち。
そして感情を読み取ることのできない神秘的な緑色の瞳が、全員をじっと見据えた。
彼の視線が群衆の中にいるダリア・ペステローズを見つけると、しばらくその場で足を止めた。
しかし、やがて彼は視線を左に向けてその前へ歩みを進める。
彼を護衛する信徒たちが列を成して後に続いた。
皇帝が玉座から降りて彼の偉大な地位に敬意を示しながら手を差し出し、握手を求めた。
同じ帝国の支配者として礼を尽くしたのだ。
「お久しぶりです、教皇陛下。」
皇帝は内心を隠しつつ微笑んだ。
アセラスもまた微笑んだ。
彼は穏やかな微笑を浮かべながら、その手を握り返す。
「お会いできて光栄です。アレクサンドロ2世、フレデリク帝国の統治者殿。」
「お越しになる際、不便な点はございませんでしたか?」
「全てに満足しております。ただ、時折少し騒々しいことを除けば。」
「それは陛下をお迎えする準備のため、内部工事を行っていたためです。ご理解ください。」
アセラスの穏やかな微笑はさらに深まり、皇帝もまた同調するように微笑を浮かべた。
「以前は、このような場で陛下と対面することなど、夢にも思わなかったものです。」
「私もそう思います。もしそれを知っていたら、もっと慎重に振る舞っていたでしょう。」
「当時の陛下の言葉一つ一つが、私にとって非常に貴重でした。」
「そうでしたか、それは幸いです。」
両者はようやく手を離した。
お互い、わずかな不快感を抱えながらも、長年の盟友としての礼儀を尽くしていた。
アセラスはその場を離れ、再び群衆に向き直った。
彼の視線はなおも確固たるものだった。
玉座ほどではないが、少し高い壇上に立っているため、人々は彼を見上げざるを得なかった。
アセラスは穏やかな笑みを浮かべながら、彼らに向かって語りかけた。
「本日この場に集まったのは、条約の細かな事項を再検討するためです。私たちがすぐに退席することがあっても、どうか気を揉まずに楽しいひと時をお過ごしください。」
軽やかな笑いが響く。
アセラスは少し待ってから続けた。
「しかし、その前に皆様に神の御言葉をお伝えしたいと思います。」
彼は振り返り、皇帝に問いかけた。
「そのようにしてもよろしいでしょうか?」
「フレデリク帝国には、聖国ほど敬虔な信者が多くはありません。それでも構わないようでしたら、どうか祝福の言葉をお伝えください。皆が喜ぶことでしょう。」
「ありがとうございます。」
彼は再び振り返り、集まった貴族たちを見渡した。
彼らもこの帝国が聖国とあまり関係が良くないことを薄々理解しているようだった。
それでも、神の御言葉は何よりも優先されるものだ。
皆が少し緊張した面持ちで耳を傾けていた。
人々は彼を仰ぎ見て敬意を抱きつつ視線を送った。
アセラスは敬虔な輝きを瞳に宿し、微笑を浮かべた。
もちろん、周囲の者たちに興味を持つわけではなかった。
彼が関心を寄せたのはただ一人。
「多くの人々がご存じの通り、私は幼い頃、この帝国で育ちました。」
彼は自分を見つめる視線と向き合い、小さく微笑んだ。
「私は不幸でした。私を守る親もおらず、常に貧困の中で苦しみながら生きてきました。しかし、そんな私に初めて希望を与えてくださった方がいます。」
突然の言葉に人々はざわめき始めた。
「それは神ではなく、ただの一人の人間でした。その方は優しい声で、私が生きる価値を教えてくれたのです。」
「・・・。」
「今日、私を何よりも喜ばせるのは、その方とこの場で再びお会いできたという事実です。」
アセラスの背後に立っていた皇帝が表情を険しくした。
彼が何を考え、思わず余計な言葉を発したのか悟ったからだ。
「失敗したな。」
周囲の空気を無視せず、アセラスは穏やかな声で話を続けた。
それはまるで神の言葉を伝えるかのように厳かだった。
「その方こそがダリア・ペステローズ嬢です。この二つの帝国が和解を成し遂げるこの栄光ある場で、もし許されるなら、彼女と私の初めての舞踏を共にしたいのです。」
その瞬間、ダリアとアセラスの目が交わった。