こんにちは、ちゃむです。
「オオカミ屋敷の愛され花嫁」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

36話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- みんな一緒に
「アルセン!」
私は膨れっ面で座っていたアルセンのもとへ慌てて駆け寄った。
そしてアルセンのすぐ隣にぴたりと座る。
「どうしてそんなに怒ってるの?」
「どこに行ってたの?今やっと戻ってきたの?」
アルセンはもじもじしながらデザートを隠した。
「早く食べたかったけど、君がいなかったから……」
「そうなの?ああ、もう、ごめんね……食べててよかったのに。」
当然先に食べていると思っていたのに。
私が忙しく屋敷を駆け回っている間、ずっと私を待っていたらしい。
私は手を伸ばしてアルセンの髪をなでてあげた。
指の間から、きらきらとした銀色の髪の毛がこぼれ落ちた。
クロエがやってきて、アルセンの前にたっぷりの生クリームがのった苺のケーキをそっと差し出した。
私とアルセンは同時にフォークでケーキの端をつついた。
そしてたっぷりの生クリームがのった部分をそっとすくって口に入れた。
「……わあ。」
私は口に入れた瞬間、とろけるような生クリームに目をまん丸く見開いた。
アルセンも同じ。
フォークを口に入れたまま、うるうるとした目でじっとしていた。
「今日はそれ一口だけ召し上がるつもりですか?」
クロエがあっさりと言った。
アルセンはクロエの背後に山のように積まれたデザートをじっと見つめた。
「でも、こんなにたくさんあるのに?」
「食べすぎるとおかしくなりますよ。」
クロエがきっぱりと言って、グラスにジュースを2杯注いで渡してくれた。
私はジュースのグラスを手に取り、一気に飲んだ。
そのとき。
扉がゆっくり開き、白髪が印象的な執事、エイデンが現れた。
「お嬢様、坊ちゃん、ご外出は無事にお済みになりましたか?」
「エイデン!」
私はうれしい気持ちでケーキをもう一口口に入れ、ぱっと立ち上がった。
「ふふっ、新戦果とのお話はうまくいったと聞きました。」
エイデンの言葉にクロエとアルセンがにこっと笑う。
「うん、そうですね。」
私は明るく笑いながら、フォークをつついた。
今日は屋敷の中をせわしなく歩き回り、あちこちでお祝いの挨拶をたくさん受けたおかげで、心が生クリームのようにふわふわしていた。
神殿や武士たちの話まで出たということで、屋敷内では私のことを「赤ちゃんお嬢様」と呼ぶ人まで現れていた。
エイデンはふふっと笑いながら、丸い眼鏡を押し上げた。
「ご主人様がもうすぐ宴会の準備をされるそうですよ。」
宴会の準備?
私は少し前にケンドリックが話していたことを思い出した。
『アルセンと私を正式に紹介する宴を開くって言ってたな。』
宴を開くというのは、私が正式に狼人族の一族の一員になるという意味だった。
そんなことを考えると、唾を飲み込むような気持ちで胸がドキドキした。
そのとき、アルセンがケーキの上の苺を口に入れながら尋ねた。
「何の話してたの?」
「ケンドリック様が宴を開いてくださるって言ってたの。」
私は再び席につき、両手でジュースのグラスを持った。
「宴会?」
アルセンが聞き返すと、エイダンが腰を軽く曲げながら答えた。
「たくさんの人を招いてパーティーをすることです。宴会を開けば、坊ちゃまやお嬢様にも新しい友達がたくさんできると思いますよ。」
アルセンは目をぱちくりさせた。
「私は友達いらないけど。」
「えっ?」
「いるじゃん。」
アルセンは私の袖をぽんと軽く叩いた。
「もちろん、お嬢様にとって坊ちゃまは大切なお友達でしょう。でも、友達は多いほうが良いんです。いつまでもお嬢様と二人きりで遊んでいられるわけじゃありませんから。」
「ぼくは二人だけで遊ぶつもりだよ。」
アルセンがきっぱりと言った。
そして、私の返事を待つように、そっと視線をこちらに向けてきた。
私はカップを指でなでながら答えた。
「うーん……、私も二人きりで遊ぶのは別に構わないけど、それが問題じゃないの、アルセン。」
「じゃあ、何が問題なの?」
「あなたがエクハルトの後継者だということを紹介する場なのよ。ついでに私も。」
「ついでだなんて。宴の主役は誰がなんと言おうと、坊ちゃまとお嬢様、お二人です。」
エイデンがきっぱりと、静かに言い添えた。
「はい、ありがとうございます。」
私はエイダンを見上げながら、フォークをつついた。
えへん、と咳払いをした年配の執事が、再び丸眼鏡を押し上げた。
「エクハルトには長い伝統があります。主を紹介する宴会は、主自らが準備することになっているのです。ただ、お嬢様がまだお若いので……、もしやりたいと思われたら気軽におっしゃってください。やりたくなければ、それでもまったく構いませんので。」
「宴会を私が準備するんですか?」
ものすごく広い宴会場を私が!?
私が驚いたように尋ねると、エイダンはふふっと笑って言った。
「宴会場を飾るお花や装飾を選ぶ程度ですよ。あとはケンドリック様のご指示に従って侍女たちがすべて準備いたしますので。申し上げた理由は、エクハルト夫人が戻られて久しく、今ではお嬢様がエクハルトの若奥様になられるからです。」
私はゆっくりとうなずいた。
花の種類を選ぶ程度のことなら、それほど難しくもなさそうだ。
それに―
『当然やらなければならないことなら……』
ならば、やるのが正しい。
やるべきことを後回しにして、わざわざ嫌われたくもなかった。
それに、元老たちは私の味方になってくれたが、狼人族の他の貴族たちがどうなのかはまだ分からないという状況。
余計な手間になるようなことはしないに越したことはない。
私は少しだけ悩んだあと、答えた。
「うん、いいよ。私がやる。」
「では今度は……、衣装合わせと招待状の作成が残っていますね。」
エイダンは何かをじっくり考えているように少しの間、黙っていた。
私とアルセンは黙々とケーキを口に運びながら、エイダンをじっと見つめていた。
「大まかな日程が決まったらお知らせします。それでは、ごゆっくりお召し上がりください。」
エイダンはにこやかに礼儀正しくお辞儀をして、部屋を後にした。
クロエがにっこりと笑う。
「宴会では、坊ちゃまやお嬢様の友達もたくさん来るでしょうね。楽しみですね〜」
クロエの言葉に、アルセンはふくれっ面をしながら答えた。
「ぼく、友達なんかいらないもん。」
「でも、できたらきっと楽しいよ?」
「友達がいれば面倒なだけでしょ……」
「でも、君、私と遊ぶの好きじゃない。」
アルセンは核心を突かれたような口ぶりで答えた。
「そ、それは!」
私はケーキがのっていた皿をさっと避けて、山盛りになったデザートを見つめた。
その中にはケーキだけでなく、気軽に食べられるマフィンやクッキーもたくさん入っていた。
ケンドリックが店のデザートをまるごと買い占めてくれたおかげだ。
そのため、デザート店は私たちが出た直後に店を閉めたという噂まで立った。
問題は——
ケンドリックが私たちに贈り物としてくれたものなので、他の使用人たちが食べるわけにもいかないということ。
つまり、私たちが食べきれなければ、あのたくさんのデザートが全部無駄になってしまう。
それだけは見過ごすわけにはいかなかった。
「デザート……あるじゃん、アルセン。ちょっと面白いこと思いついた。」
私はアルセンに耳を近づけて、内緒話をするように手で合図した。
「なに?」
アルセンが私の方へ体を傾けた。
「このデザート、分けてあげたらどうかな?たくさんあるから、いっぱい分けてあげられるよ。」
私はクスッと笑った。
神殿での件もうまくいったし、エクハルトの使用人たちによろしく頼むという意味で分けてあげたらいいと思った。
「……誰に分けてあげるの?」
「それはもちろん使用人たちよ。侍女たちもいるし、アキムに、侍女長のロドリー、それに……あっ、エイダンにもあげればよかった。さっき来たとき渡せばよかったのに。」
私は心の中で分け与える相手を一人ずつ数えてみた。
しばらく考えていたアルセンが口を開いた。
「うーん……、どうせ私たちは食べきれないんだし、分けてあげようってことだよね?」
「うん、そう。しかも、美味しいものはみんなで食べたほうがもっと幸せになるでしょ。それに、もう一つ……」
「もう一つ?」
「私、さっきたくさんお祝いの言葉をもらったんだ。だから、そのお返しとして分けてあげたいの。」
私は、さっき私たちが食べたイチゴケーキを指さして言った。
私の言葉に、アルセンは素直にフォークを動かしていた。
「うん、いいよ。」
私とアルセンの計画を聞いたクロイが、小さな遊び道具のような手押し車を持ってきてくれた。
そしてその上にデザートの箱をきちんと積んでくれた。
「うちのお嬢様は心も美しいですね。さあ、こうすれば配るのもちょっとは楽になりますよ。」
アルセンは手押し車は自分が引くと言い張った。
しかし私はアルセンの手から手押し車の取っ手を奪い取った。
「ダメだよ。君は体が弱いんだから。」
「えっ? でももう治ったのに……。」
私はアルセンを指さして、ひらひらと薄い羽を振って見せた。
「私、まだ羽も生えてないのに。」
アルセンがもどかしそうに口をぎゅっと結んだので、私はそっと手袋を差し出した。
私はその手袋を握った。
そしてアルセンと一緒に邸宅のあちこちを回って、デザートを分けて回った。









