悪役なのに愛されすぎています

悪役なのに愛されすぎています【84話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役なのに愛されすぎています】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

84話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 夏祭り⑧

翌朝。

激しく降っていた雨は嘘のように消え、陽光が煌めきながら差し込む早朝。

クロードはベッドのヘッドボードにもたれ、部屋に訪れたメロディに問いかけた。

「メロディ、実は僕のこと嫌いでしょう?」

「……え?」

突拍子もない質問に、彼女は驚いて聞き返した。

「昨日、僕に抱きしめられた時、すごく固まっていたよね?」

彼が妙にしょんぼりした様子で言うので、メロディは慌てて頭を振った。

「か、固まっただけですよ。そんなわけないです!」

「ふうん。」

「本当ですよ!」

しかし、クロードはどうもメロディの言葉を信じる様子がなかった。

「本当にです! 坊ちゃんには、本当に感謝しているんです。昨日、坊ちゃんがいなかったら本当に何が起こったのか…… そして、坊ちゃんが無事だったことも嬉しいです。

「でも昨日、川でタオルを差し出した時、私を恨めしそうに見ていましたよね?」

「そ、それは…… 坊ちゃんが危険にさらされるのが怖くて…… だから、決して嫌でやったわけではありません!」

必死の弁明が通じたのだろうか。固くこわばっていた彼の表情が、少しずつ和らいだ。

「分かった。僕が誤解していたんだね?」

「そうです!誤解です!私たちの間に誤解の抱擁なんて、喜んでできることですよ!」

メロディが慌てて言うと、彼は少し微笑みながら、両腕を広げた。

「どれくらい?」

メロディは、彼が差し出した両腕をじっと見つめた。

「今…… するんですか?」

「メロディが嫌でなければ。」

それは、極端に言えばクロードとの抱擁が心地よいものになることを意味していた。

嫌いかと聞かれれば……嫌いではない。

それに、今の彼の状態は随分健康そうに見えるので、同情してしまう気持ちもあった。

『私が慰めるために抱きしめてもいい状況なのかな……?』

でも、別に感傷的な気分になったわけでもない。

「無事で良かった……です。」

メロディはベッドの近くにそっと寄り、少し緊張した様子で体を縮めた。

どうしたらいいのかわからず、手を彷徨わせた末に、彼の両肩をそっと掴んだ。

薄手のシャツを着た彼の肩口は思ったよりしっかりしていて、手のひら越しに感じる体のラインに、何か妙な気分になった。少し違和感もあって——

「心配してくれてありがとう。嬉しいよ。」

彼はメロディの背中をぽんぽんと優しく叩いた。

それ以外に触れる場所もなく、少しぎこちない抱擁は、そのまま数秒だけ続いた。

『どれくらいこのままでいればいいの?』

実は、メロディは適当なタイミングを見計らって抜け出したかった。

しかし、彼がずっと背中に寄り添っているため、どうすることもできなかった。

もし先に身を引けば、「ほら、メロディはやっぱり私のことが嫌いなんですね。」なんて言われるに違いない。

『それに、寄り添っている手がやけに優しい……。』

昨日から高鳴っていた心臓が、ようやく本当に落ち着いてきたような気分だった。

何よりも、彼の鼓動や呼吸音がはっきりと聞こえるのが心地よかった。

生きているという実感が湧いてきたからだ。

『もう少しだけ……このままでいたいな。』

メロディが少し妙な感情に完全に浸りかけたその時だった。

トントン。

突然、ノックの音が聞こえてきた。

その小さな音が、瞬く間にメロディを現実へと引き戻した。

『今、私……何をしてたの?』

そんな疑問が頭をよぎる。

答えを出したくない気持ちもあったが、なぜか全身が急に熱くなるのを感じた。

メロディは、つかんでいた彼の肩からそっと手を離し、慌てて後ろに下がった。

もしかすると彼は——『僕の抱擁って、そんなに嫌だった?』そう聞いてくるかもしれない。

そう思うと、少しだけ身構えてしまう。

坊ちゃんはこういう機会を絶対に逃さない人だから。

「………」

しかし、彼はそれ以上何も言わなかった。

ただ、メロディをじっと見つめているだけ。

「あ、その、えっと。」

沈黙が続くのが気まずくなり、メロディはとりあえず何か言おうとした。

「坊ちゃんは……とても健康ですね。私が触ってみて……あ、いや。肩に触れたくらいで、何か分かるわけじゃないですけど。」

……これほど時間が経っても、まったく音を立てることになるとは思わなかった。

ついに彼が声を上げて笑った。

これほど堂々とした声を聞けば、誰でも同じように感じるはずなので、メロディは彼を責めることはできなかった。

「コホン、よかったですね。私が健康で。」

「ち、違いますよ!」

メロディは真っ赤な顔で何か言い返そうとしたが、うまく言葉が出なかった。

その様子が少しも見えなかったのか、彼は指先でドアを覆った。

「あ。」

メロディはその時になって、ノックの音に驚いて現実に戻ったことを思い出した。

おそらく、まだドアの向こう側で誰かが待っているだろう。

「入って。」と言って招き入れることもできたが、メロディは直接ドアを開けることにした。

その間に、自分の驚いた気持ちを整理する時間も必要だった。

『落ち着け、落ち着くのよ、メロディ・ヒギンス。』

メロディはゆっくりと歩きながら、駆け寄ってくる顔を落ち着かせようとした。

『でも、よかった……ちょうどノックの音が聞こえて。』

もし、あのまま何も邪魔が入らず時間が過ぎていたら。

『……どうなってたの?』

メロディはふと立ち止まり、両手で顔をぎゅっと覆った。

頭の中にある情景が浮かんでしまって、少しだけ混乱してしまう。

『バカ!』

後ろで坊ちゃんが「メロディ?」と不安げに呼びかける声が聞こえたが、彼女はそれどころではなかった。

『あれはただの抱擁よ。ただの抱擁!別に、動揺するようなことじゃない!』

よく考えてみれば、メロディだってロゼッタを抱きしめたことがある。

今日に限った話じゃないはず。

二人が交わした抱擁も、まるでそんなものだったのかもしれない。

いや、そう考えるべきだ。

そもそもクロード・ボルドウィンがそれ以外のことをするはずがないではないか。

何よりも原作がそれを証明していた。

『ロゼッタを本当に本当に愛していて、スキャンダルの一つもなかった男よ!結局、結婚も恋愛もしなかったんだから!』

メロディは小さく拳を握りしめた。

『やっぱり、あれは安堵の抱擁だった。そんなの、ボルドウィンとヒギンスの間ではいくらでもあることなんだ。』

そう結論を下すと、少し気持ちが楽になった。

「大丈夫ですか?」

まるで背後からクロードが心配して問いかける声が聞こえてきた。

実際、彼は十回以上彼女を呼んでいたのだが、メロディはそれに気づいていなかった。

「ええ、当然です。」

「でも、メロディ。」

「分かってますよ、それはただの抱擁でしたよね?ええと……ボールドウィン家とヒギンス家の絆を感じられてよかったです。とても深い歴史がありますもんね!そうでしょう?」

「……え?」

彼が驚いた表情をしたので、メロディは妙に満足感を覚えた。

いや、とても嬉しかった。

間違いなくこの悪魔は、メロディがこの抱擁を「別のもの」と勘違いするのを待っていたに違いない。

明らかに驚かせようと画策していたのに、彼女が見事にその本質を見抜いて回避したのが気に入らないに違いなかった。

「私たちの間に、それ以外の抱擁があるわけないじゃないですか!」

メロディはもう一度強調し、誇らしげに胸を張った。

どうやら今日は、メロディがクロードに大きな勝利を収める日になりそうだ。

彼が戸惑ったように「……そうですね。」と微妙に言葉を濁すのを見ると、確信が持てる。

メロディは鼻先まで赤くなりながら、固く閉じられたドアを勢いよく開けた。

「こんにちは、ヒギンスお嬢様。」

訪ねてきたのは、この邸宅の管理人であるウェンデルだった。

「すみません、お待たせしてしまって。」

「いえ、そんなことはありません。全然待っていませんよ。」

ウェンデル・ベントンは、まずメロディの明るい顔を見て安心した様子だった。

「お嬢様が笑顔でいらして安心しました。きっと、坊ちゃんもお元気で……ですよね?」

ウェンデルはメロディの後ろに見えるクロードの様子を確認しようとして、一瞬話を止めた。

彼は壁に寄りかかり、まるでどこかの虎視眈々と獲物を狙う人のように、静かに佇んでいた。

「坊ちゃん、何かあったのですか?」

彼がぼそりと尋ねると、メロディは肩をすくめて、たいしたことではないというように答えた。

「多分、私を思うようにからかえなかったから、すねているだけですよ。」

ウェンデルはしばらく二人を交互に見つめ、難しくない結論にたどり着いた。

「どう見ても、からかっているのはヒギンス嬢の方に思えますが……。」

「……え?」

だが、それをもう一度口にするわけにもいかず、彼はただ微笑むだけにとどめた。

彼がただ願うのは、あの健気な坊ちゃんが、もうこれ以上、からかわれたりしないことだけだった。

 



 

 

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