こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は43話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
43話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 聖女セスフィア②
悔恨の声だった。
エスターはセスフィアの言葉が本気かどうかを知るためにじっと見つめる。
セスフィアもエスターをじっと見つめた。
お互いに対する疑いの中で、妙な共感が沸き起こる。
「これからは私が聞くよ。あなたはどうして私を訪ねてきたの?神殿の外にいるということは、聖女候補生じゃないということだけど、どうしてそんな聖力を持っているの?何を知っているの?」
「・・・まだ記憶が読めますか?」
エスターは悩んだ末、セスフィアに記憶を見せることを決心した。
エスターが経験したことは言葉で説明するからといって信じられるものではなかったからだ。
「あなたが見せてくれれば、まだ可能だ」
記憶を読むのは聖女の能力の一つ。
相手が心を開いたときに限って可能なことだった。
「では、直接見てください」
エスターは筆を置き、左手をセスフィアに差し出す。
平気なふりをしたが、手の甲がぶるぶる震えた。
セスフィアは乾いた手をとても苦労して動かした。
エスターの手の上に自分の手を置くことさえ、今のセスフィアには手に余ることだ。
そして彼女が見るようになったのは・・・。
ひどく虐待され苦痛を受けた数多くのエスターの過去。
『どうか誰でもいいから私をここから出してください。神官様・・・私をご存知じゃないですか。私が本当の聖女です!ラビエンヌじゃなくて私が!』
『うるさい。私たちの神殿の聖女はただラビエンヌ様だけだよ。お前がまともに狂ったようだ』
際限なく否定される姿と。
『なんで?悔しいの?悔しいことはないよ。あなたみたいなのが聖女だったら、みんなから笑われるって』
ラビエンヌに虐待される姿まで全てを見たセスフィアの目からは止めともなく涙が流れた。
「ああ・・・神様・・・これは本当に・・・あまりにも残酷です」
セスフィアは苦しみながらエスターから手を引いた。
エスターから渡ってきた記憶と苦しい感情に耐えるには、セスフィアがあまりにも弱くなっていた。
「すまないね。私は全然知らなかった。守ってあげられなくてごめんね。一人でどれだけ大変だっただろうか。どんなに辛かっただろうか・・・」
セスフィアは、自分がエスターを閉じ込めたかのように申し訳なく思い、残念さを隠せなかった。
エスターはつられてこみ上げる感情を押しつぶした。
自分に謝らなければならない人は聖女ではなくラビエンヌだから。
もちろん、セスフィアを恨んだこともある。
彼女の啓示のためにラビエンヌが簡単に自分を探したためだった。
しかし、セスフィアもラビエンヌに犠牲になった人だと思うと、彼女を恨んでいた心は雪が解けるように溶けた。
「聖女様は関係ありません。全く知らなかったということを今信じています。だから罪悪感を持たないでください」
「あなたも私も、私たちは結局神殿に遊ばれたのね」
セスフィアは自分が思っていたよりも醜い神殿の実体に衝撃を受けた。
全部知っていながらも本物の聖女を閉じ込めてラビエンヌを前面に出すことを考えたということは、本当にぞっとした。
「これからどうするつもりなの?」
「わかりません。混乱しますね。ただ、聖女様に会いたかったし。会ったら何かはっきりすると思ったけど、違うから。よくわかりません」
「一番いいのは忘れて生きることだ」
セスフィアの言葉にエスターが怒りを覚える。
「忘れろって?」
言葉のようにそんなに簡単に忘れて、消せる記憶ではなかった。
エスターが怒ると、セスフィアは理解するように手の甲を軽くたたいた。
「忘れられる時の話だね。無理に忘れる必要はない。それで君が結局忘れられないなら・・・」
セスフィアの目が光った。
すべての人を見下ろし、権力の頂点に立った者の超越した目つきの中には、少し銃が映った。
「神殿を壊してしまえ」
現聖女の口から出てくるとは全く予想できなかった言葉に、エスターの口がゆっくりと開く。
「それでもいいよ。もうこの神殿は腐るほど腐っている。つらくて腐った匂いがする」
セスフィアは何でも打ち負かすような勢いで静かに詠んだ。
「燃やすこと以外に方法はないだろう」
「そのつもりです」
セスフィアから同じ考えを聞くようになって少し驚いただけで、神殿を崩すのはエスターもやはりずっと考えていたのだった。
「そうだね。賢い子だね。私はなぜそうできなかったのだろうか。うんざりするここを捨てて去ることができなかったことが今になって身にしみて後悔になる」
セスフィアは震えながら手を上げ、エスターの頬に触れる。
パサパサして荒れた手だった。
「ご覧の通り、私はもうすぐだ。せいぜい何ヶ月だろうか?すでにラビエンヌが次の予定者に決まったそうだ」
エスターはぎくりとしてセスフィアの手を握る。
予定者になったということは、すでに神殿の権力が移譲される準備が真っ最中だという話だ。
「まだ聖女様がいらっしゃいますよね?」
「そんなことが何の意味があるんだ」
セスフィアのまつげがぶるぶる震えた。
「私が生きている間は大丈夫だが、死んだ後はあなたに対する啓示が大神官の祈祷に映るだろう。それでは神殿は何とか君を捜し出すだろう」
エスターも予想していたところだ。
エスターが静かにうなずくと、セスフィアの手に力が入る。
「その前に力をつけなさい。どうせなら皇室と手を組むようにしなさい」
「皇室・・・ですか?」
「そうだよ。君が今持っている家門という背景。そこに君の能力まで加われば、皇帝の心を掴むのに十分だろう。誰よりも神殿を崩したがるのが皇帝だから」
エスターは複雑になった考えをきちんと整理しながら頭をなで下ろした。
皇帝と手を組むということは、全く考えもしなかった発想だ。
ところが、ドアノブが回る音が聞こえた。
パラスが戻ってきたようだ。
エスターとセスフィアは急いで話を締めくくる。
「残念だが、ここまでだ。あなたに会えて嬉しかった」
「聖女様・・・」
「エスター。いいえ、ダイナー。もう一度謝らせてちょうだい」
パラスが部屋に入ってくると、ずっと囁くような音が止んだ。
セスフィアは意識を取り戻した跡形もなく、初めて見た時の姿に戻った。
「もう時間があまりない。出ないと。終わりに近づいてるの?」
「ちょっと待ってください」
エスターはまだ残っている絵を素早く仕上げる。
重要な顔はすでに描いておいた後なので、長くはかからなかった。
「できました」
「そうだね。とりあえず、ここを出よう」
エスターは道具を整理しながらセスフィアをちらっと見た。
(二度と見るのは難しいだろう)
時間があまりないというセスフィアに再び向き合うのは難しそうだった。
エスターは最後に彼女が気楽に去ることを祈り、描いた絵をパラスに渡す。
「完成版です」
「おお!どうやって昔の姿を再現したのか」
(でしょ?今の目つきとは全然違うけと・・・これは以前のセスフィアよ!)
パラスは興奮を隠せずにぶるぶる震えた。
実際にセスフィアの本来の姿を見たために描いたものだが、実状を知らないパラスは感嘆を禁じえなかった。
「君を連れてきてよかったね。これは私にとって宝物だ。本当にありがとう。帰って必ず大きく謝礼する」
「はい」
部屋を出る前、エスターは最後にセスフィアを振り返る。
大きな部屋に一人で捨てられた彼女を置いていく気分で足が重かった。
セスフィアからの提案は神殿の破壊。
帝国と手を組むことを提案されましたが、エスターはどのような行動に移るのでしょうか?