こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は54話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
54話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プレゼントを買いに
数日後、エスターはため息をつきながら部屋の中をぐるぐる回った。
考えに深く浸っていたので、頬に風がいっぱい入ったままだ。
「何をあげようかな?」
悩みの種はジュディとデニスの誕生日プレゼント。
今までの感謝の気持ちを込めて何でもいいものをプレゼントしたいのだが・・・。
「大体のものは全部持っているじゃないか」
すでにないものはないというのが問題だった。
必要なものはドフィンが全部買ってくれるので、適当なものがなかった。
「お嬢様、何か悩みでもありますか?」
エスターが一人でくよくよしていると、見かねたドロシーが尋ねる。
「うん。お兄さんたちの誕生日プレゼントに何をあげればいいのか全然分からない」
「それをもう悩んでいるんですか?」
「もうだなんて。もう一ヶ月半しか残ってないよ」
どんなプレゼントをあげればいいのか分からないので、1ヵ月半という時間も足りないようだった。
ドロシーは誕生日プレゼントで深刻に悩むエスターがとても可愛くて一人で笑う。
「あまり悩まないでください。お嬢様からのプレゼントなら、庭の石ころを拾ってあげても喜ばれるでしょうから」
「でも・・・」
エスターは浮かない顔で再び部屋を歩き始める。
そうしているうちに、何かを思い出して立ち止まった。
「こういうのではなく、出かけてきた方がいい」
「今からですか?」
「うん。市場に行ってこよう」
部屋でくよくよするよりは、一応目で見物でもしてみたほうがよさそうだった。
エスターは出かける前に、ダイヤを手に入れるためにベッドの下から重い箱を取り出す。
幸いなことに、先週鉱山に行ってきたおかげで、ダイヤは使えるほどだった。
玲瑠と輝き、山盛りに積まれているダイヤを一束取ってポケットに入れ、市場に向かう。
馬車で歩き回ることもできるが、詳しく調べるために市場の入り口からは馬車から降りて歩くことにした。
「商店がすごく多いね」
「はい。ここから左に行くと武器屋街が出て、右には骨董品店が多いです」
市場を行き来した経験が一番多いビクターが・自信を持って道を案内する。
エスターは道路の両側に敷かれている店野原を歩き回って熱心に品物を見物した。
「ビクター、あなたは何がいいと思う?」
「ジュディ坊ちゃんなら剣がお好きだと思うし・・・、デニス坊ちゃんは本ではないでしょうか?」
「それはあまりにもありきたりじゃないか」
2人が好きなものではあるが、すでにあまりにも多く持っていて与える意味がなかった。
エスターは熱心に店をのぞき込み、何かプレゼントがあるか調べる。
しかし、直接見ても適当なプレゼントは見当たらなかった。
「大変だ」
プレゼントを探すという一念で1時間以上歩いたところ、だんだん足が痛くなってきた。
しばらく休むために、ちょうど近くに見えるベンチに向かう。
その時だった。
突然後ろから誰かがエスターの名前を大声で呼んだ。
「エスター!」
びっくりしたエスターが急いで後ろを向く。
いったい誰かと思ったら、まったく思いもよらない人物だった。
「ノア?」
エスターは元の場所に凍り付いた。
ノアはエスターに向かってつかつか近づいてきて、ビクターが警戒しながら二人の間を断固として阻んだ。
「お知り合いですか?」
「うん。私の友逹よ」
ひどく警戒するビクターを落ち着かせ、エスターもノアに向かって近づく。
(相変わらずだね)
帽子を深くかぶっていても、ノアの外見は全く隠されていない。
昼間に外から見ると、さらに光が出ていた。
ノアは嬉しくてたまらないという表情でにっこり笑ってエスターの前に立つ。
「久しぶりだね?」
笑顔がまばゆいほとで、エスターはごしごしと目をこすった。
「そうだね。どうしてここにいるの?」
「買い物に来たんだ」
ノアが本当だと言って右手に持ったかごを見せてくれた。
果物と食料品がいくつか入っている。
「買い物にここまで来たの?」
「うん。この前引っ越してきたんだ」
(・・・嘘でしょ?)
ただ明るいノアの返事にエスター一人が大きな衝撃を受けた。
「あなたは聖域にいなければならないじゃないの?」
「それが」
ノアが秘密を言おうとするように耳を近づけてという真似をする。
何かとエスターが耳を突き出すと、ノアがエスターだけが聞こえるほど小さくささやいた。
「この前、君が力をたくさん分けてくれたじゃないか。おかげさまで、しばらくは聖域じゃなくても構わないようになったよ」
「なんでそれを耳打ちするんだよ!」
こそこそ話をするといって顔を近づけすぎていた。
当惑したエスターは顔を赤らめ、顔を後ろに引く。
「耳打ちするとよく聞こえるじゃないか」
ノアは肩をすくめて笑う。
「でもまさかここに引っ越してきた理由が私のせいじゃないよね?」
「いや、違う。ここの川のそばに私の親戚の家があるんだ」
違うと言っているのに、なんでこんなに気まずいのか。
ノアの話を聞いていたエスターの表情が暗くなる。
「こうなると思って約束をしないようにしてたのに・・・」
一度ずつノアが思い出したが、神殿の仕事と勉強などの仕事で忙しくて訪ねて行くことを考えられなかった。
なぜか分からない罪悪感がしてノアを見るのが申し訳なくなる。
「早く行けなくてごめんね」
「大丈夫だよ。こうやって会ったから、いいじゃないか?同じ領地とはいえ、偶然会うとすごく不思議だね。そうだね」
しかし、ノアは全く寂しがらなかった。
むしろエスターに会ったのが楽しくてどうしようも.ないという表情だ。
「体調は大丈夫?歩き回ってもいいの?」
「まだ?でも、ちょっとクラクラするような気もするし」
ノアが「急に目眩がする」と言って、額に手を上げた。
そして、目をしかめながら熱心に痛いふりをする。
「それで、手を繋いでもいい?」
「・・・分かった」
それが大げさだということは聞かなくても感じられたが、申し訳ない気持ちでエスターも知らないふりをすることにした。
許可が下りるやいなや、ノアが薄くて長い手を伸ばして差し出す。
エスターは緊張して何度も瞬きをしながらノアの手に自分の手を重ねた。
「お嬢様!」
「あら!」
その姿に驚いたビクターとドロシーが同時に大声を上げる。
「しっ、ちょっと待って」
エスターは二人に静かにしてと手招きし、手のひらに集中した。
触れ合った手のひらに乗って、聖力がノアに渡るのが感じられる。
「これくらいなら十分だ」
ところが、ノアがあっという間に手を引く。
エスターが感じるにはあまりにも少し抜けて首をかしげた。
「それでいいの?」
「一度にたくさんもらったら、また長く会えないかもしれないから」
なんだか申し訳なくなったエスターはノアの目を避けて頭を軽く下げた。
ところが、エスターとノアが何も言わずにじっとしていると、ビクターが顔色を伺いながら慎重に尋ねる。
「お嬢様、まさか彼氏ですか?」
「そんなんじゃないよ!」
エスターはびっくりして絶対違うと首を横に振った。
「じゃあ、どうして手を・・・」
手の平に乗って伝わった聖力は目に見えない。
そのため、ビクターが見るには2人が手を合わせていちゃついているように見えたのだ。
どんな関係なのかは分からないが、エスターにしつこく言うのが良くないように見えて、ビクターの目に警戒が浮かぶ。
ノアはビクターが自分をじっと見ると、負けずにビクターを見始めた。
エスターと会話を交わす時は、ただおとなしく見えたノアの目つきから、冷たさを感じたビクターがぎくりとする。
「お友逹の身分は確かですか?」
「たぶん」
エスターは首をかしげる。
実はよく分からないが、父が紹介してくれたので確かだと思った。
「ところで、エスター、ここで何をしていたの?」
ノアが会話に割り込んで、エスターの覗線を自分に向ける。
「来月にお兄さんたちの誕生日パーティーがあるんだ。それでプレゼントを買いに来たの」
ノアなら同年代の男の子なのでちょうどよかった考えて、エスターがきらきらと目を輝かせながら尋ねる。
「あなたなら何が欲しいと思う?」
「私は君がくれる手紙」
ノアは悩みの余地がないとし、素早く答えた。
「そういうのじゃなくて」
「本当だよ。それよりもっと大きいプレゼントはないと思うけど」
お兄さんたちに特別なプレゼントをあげたかったエスターは、首を横に振る。
「それとも絵はどう?あなた、絵がすごく上手じゃん」
「すでに描いたことがあるよ」
「また描いてあげたらどう?私は物質的なものより、君の真心が入ったプレゼントを貰うともっと嬉しいと思う」
皇子だったノアは誕生日パーティーの度に数え切れないほと多くのプレゼントをもらってきた。
しかし、それらに嬉しかったことはない。
山積みされた物は感情を起こさなかった。
「ふむ。もう少し考えてみよう」
エスターはじっくり考えて隣の店に入った。
鏡を集めて売る店だ。
色とりどりの鏡を見物するエスターのそばをノアがついて回る。
「エスター、今度私の誕生日の時もプレゼントの悩んでくれるの?」
「あなたは手紙でいいのでしょう?」
エスターはノアと距離を置くためにわざと冷たく答えた。
「そうだよ。でもあなたがこんなに私のプレゼントを悩んでいる姿を想像すると・・・すごく嬉しいんだよね。その間はずっと私のことを考えてくれるでしょう?」
ちょうど壁にかかった鏡にノアの表情が映っていた。
何がそんなにいいのか明るく笑っている。
エスターはぼんやりとその姿を眺めた。
そうするうちに鏡の中で自分を見るノアと目が合う。
ノアはまたにっこり笑った。
「あなたはどうしてそんなに毎日笑うの?」
「あなただけ見れは笑顔になるんだ」
ノアは「大したことない」と言って鼻をさっと拭いた。
らしくなく照れくさそうに目を避けたせいで、エスターも恥ずかしくなって首をさっとかしげる。
「元々、よく笑うんだよね?」
「え?そうでもない。昔は人々が私を冷・・・いや、とにかく私はあまり笑わない。今もそうだし」
かつてのノアのニックネームは「冷皇子」だった。
幼い頃から皆が支えてきたため、大抵のことには笑わず、高慢さが天を突いた。
皇居にいた時、ノアは世の中が自分の思い通りに回ると思う稚気の子供だった。
しかし、聖域で過ごしながら多くのことが変わった。
そんなノアの姿をエスターが知るはずがない。
「そういうことにしよう」
「本当なのに」
ノアが「悔しい」と言って腕を組んだ。
双子のプレゼント。
エスターが渡すものなら何でも喜びそうですよね!