継母だけど娘が可愛すぎる【３３６話】ネタバレ

強烈な光が瞼を刺激していた。

その光に導かれるように意識を取り戻したが、全身を走る痛みに顔をしかめた。

「痛い・・・痛い・・・。」

その時、頬にひんやりとした何かが触れる。

それは火ではなく、湿った草の感触。

目を少しずつ開けると、視界に広がるのは緑と青。

自分の目の前には湖が広がっていた。

ぼんやりと周囲を見回した。

これは夢？

でも、湖に映る陽光はあまりにも眩しく、現実のようだった。

足裏に草が触れる感覚も確かにある。

無邪気なほど穏やかな風景が広がっていたが、どこか不安が拭えなかった。

私は芝生の上に仰向けで倒れていた。

「一体何が起きたの・・・？」

最後に覚えているのは夜だった。

ギデオンが私を殺そうとして、セイブリアンが助けに来てくれた。

そして、意識を失った。

この一晩の間に何が起こったのだろう？

尋ねたいけれど、答えが見つからないままだ。

ここはどこだろう？

周囲を見回すと、一台の馬車が停止していた。

嫌な予感がする。

何かが間違っているようだった。

もしかすると、大妃が宮廷を掌握するのに成功し、その後逃亡したのかもしれない。

「やっと目覚めたな。」

ざわめく声と共に、湖の近くの茂みから誰かが姿を現した。

その顔を見た瞬間、私は再び凍り付いた。

「・・・ギデオン？」

昨晩、自分を殺そうとしたあの彼が、今、陽の光の下に立っていた。

たった一日で彼の様子はまるで別人のように変わっていた。

赤く充血した目と青ざめた顔。

包帯に覆われた体は血に染まっていた。

しかし、何よりも恐ろしかったのは、彼から溢れ出る狂気。

その瞳の奥に、これまで見たことのないような深い闇が宿っていた。

その場所には私と彼だけだった。

二人きりだった。

周囲は驚くほど静かで、誰もいない。

「他の人たちはどうなったの？まさか、あなたが手を下したの？」

もし私の家族に危害が加えられていたなら、どんなことをしてでも報復するつもりだった。

ギデオンは私の言葉を聞いて、くつくつと笑う。

両手で顔を覆いながら、乾いた笑い声だけが響いた。

「二人は恐ろしい。恐ろしくて、素晴らしい存在だよ。大妃は敗北した。セイブリアンとその手下が宮廷を占拠したんだ。」

おそらく妖精たちのことを指しているのだろう。

大妃を制圧したのなら安心だが、なぜ私はここにいるのだろう？

ギデオンは狂ったように中空を見つめている。

「なぜこうなったんだ？明らかに、本来ならば私は王女と結婚してこの国の王になっていたはずだ。それは間違いないはずなのに・・・」

彼の指の間から彼の瞳が見えた。

赤く充血した眼光が私の首を絞めるようにぎらついていた。

「全部お前のせいだ。お前が自分の役割だけを全うしていれば、最初からブランシュを殺そうとしていれば・・・！」

彼は威圧的に私に迫ってきた。

ギデオンが一歩踏み出すたびに、私は後ずさりしたが、どこにも逃げ場はなかった。

口がカラカラに渇いた。

魔法でギデオンを制圧できるだろうか？

彼の注意をそらすため、私は問いかける。

「私を殺すつもりなの？」

その言葉にギデオンは薄く笑みを浮かべた。

まるで私を嘲笑するかのような顔つきで。

「殺す？」

まるで小動物をいたぶるような冷たい表情だ。

私が答えないままでいると、ギデオンは低く笑った。

「死ぬだけでは足りない。」

彼は懐から何かを取り出す。

陽光を浴び、それが鈍く光るのが見えた。

最初、彼が取り出したのは刃物だと思った。

しかし彼が取り出したのは黒く光る宝石だった。

その宝石を彼は凶器のように握りしめ、私をにらみつけた。

「お前が俺の人生を台無しにしたんだから、お前の人生も台無しにしてやる。お前が持っているものを全部奪ってやる。」

不気味な寒気が肺の中を満たした。

そして同時に、ギデオンは宝石を力強く握り締めた。

宝石はまるで空っぽのガラス瓶のようにひび割れ、砕け始めた。

そしてその中から黒い何かが流れ出し始めた。

その黒いものは瞬く間に魔力となり、私を飲み込んだ。

息が詰まり、まるで沸き立つ水に落ちたような痛みが全身を襲う。

「痛い、痛い！」

痛みの矢が胸から足先まで突き刺さるように駆け抜けた。

自分の骨が砕け散る音が聞こえた気がした。

全身が凍りつくような痛みの中で、ギデオンの狂ったような笑い声が響いた。

「アビゲイル、お前に呪いをかけてやる！お前は自分が思う最も醜い姿で生き続けるんだ、永遠に！」

痛みの中で彼の冷たい声が耳に残った。

肌を引き裂かれ、骨が砕けるような感覚に息もできなかった。

ただ無力感に打ちひしがれた。

気が遠くなるような時間が過ぎ、ようやく意識が戻った。

ギデオンが言った言葉の意味が、遅ればせながら理解でき始めた。

呪い、呪いだって。

私が思う最も醜い姿になる呪い。

獣のようになるのだろうか？

それとも蛙？

その想像が一瞬浮かび、頭が混乱する。

震える手を上げて、自分の体に触れてみた。

肌は裂けることもなければ、傷も見当たらなかった。

徐々に視界が戻り、自分の手が見えるようになった。

掌には火傷の跡のような紋様が刻まれているのが目に入った。

目の前の手を見て、それが確かに自分の手だと確認した。

しかし、それは同時に、自分の手ではない気がした。

頭の中が真っ白になり、表現のしようがない。

この手、記憶にある手だ。

不安が波のように押し寄せてきた。

私は恐怖に駆られたように湖へ向かう。

鏡のように透き通った湖面に、自分の姿が映っていた。

その姿を見た瞬間、魂が切り裂かれるような感覚に襲われた。

「いやだ、そんなはずがない・・・！」

私は発狂したように湖面をかき混ぜた。

水面が乱れても、再び静まると、そこに映る姿は変わらなかった。

その顔——認識できない顔。

何十年もの間、私を追いかけて、私の生涯を呪い続けてきた顔。

そこには、前世の自分の姿が映し出されていた。