こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
77話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 二人の関係③
夜が明ける頃、部隊の三人が拘束されていた。
まず建物に捕らわれたベンと同じテントを使っていた騎士、そして別のテントを使っていた二人の騎士が、建物に向かって進むところを見つけた哨兵によって拘束されていた。
「私が先に入ります。」
マクシオンが志願すると、エドワードが頭を振る。
「マクシオン、お前は以前も黒魔法でひどい目に遭ったのだから、残って部隊を統率しろ。建物から外に出てくる者がいないか確認するんだ。」
「・・・はい。」
「エイヴン、どんな偽物と出会おうとも、その中で真実を見つければ良いと言っていたな。」
「はい。」
「では、捜索に長けた者の中から三人を選び、チームを組んで送り込むのはどうだろう。」
「良い案だと思います。」
エイヴンに注意事項と調査方法を聞いた三人の騎士は簡易装備を整え、建物へと向かった。
三人が建物の前に立つと、扉が三つ現れた。
彼らが中に入ったと同時に扉が閉じる。
「進展は?」
「ありません。」
「他の道から出てくる可能性もあるので、部隊を編成して建物を時間ごとに一巡し、警戒を続けるように。」
「はい。」
しかし、翌日が来ても中からは誰一人出てこなかった。
中に入った騎士が精神を保ち、肉体を維持できる期限は1週間。
時は早く過ぎていき、エドワードが少しの間その場を離れている間に、夜間警備をしていた二人がさらに建物に取り込まれた。
エドワードは、観察力のある部隊員5人を建物に送り込んだが、やはり彼らも戻っては来なかった。
ついにここに到着してから一週間が経つ日だった。
エドワードは冷静な顔で口を開いた。
「私が直接中に入る。」
ヘンドリックが焦りながら叫んだ。
「殿下、それはなりません! 私たちは殿下を守るためにここにいるのに、どうして殿下ご自身が中に入られるのですか!」
「私が入らなければ、中にいる者たちは黒魔法に呑まれ始めるだろう。そして、そうなれば魔法の範囲が広がるか、さらに強力になるはずだ。それを防ぐには皇城に援軍を要請するしかないが、それは容易ではない。ここを離れれば全てを忘れることになるのだから。」
転送呪文を使おうと試みたが、結果は同じ。
魔法は特定の範囲外に出た瞬間、エドワードの元へ戻ってきた。
「どうせ中に入って何かを探せばいいのなら、私も一緒に入ります。」
皆の視線がルイーゼに向けられた。
エドワードとマクシオンが同時に口を開いた。
「ダメだ。」
「無理だ。」
「なぜですか?」
「この魔法は、剣術の強い者が生き残るか、勝利するような構造ではありません。外部から影響を及ぼすことのできない仕組みであれば、中も同じでしょう。」
「それにエドワード様は、あなたに気を取られて、むしろ集中できなくなってしまいますよ。」
「・・・こういう時は二人、息がぴったりだわ。」
ルイーゼが小さくため息をついた。
その後、エドワードの代わりに専門家に近いエイヴンが入るのはどうかという意見が一時的に出される。
しかし、彼は結局、外から魔法を分析して解除できる別の方法がないか研究する役目を任されることになった。
「脱出者を見つけ出すのはいつも私の役目だったじゃない。中で彼らを探して一緒に戻ってくることなんてお手の物よ。私ほどあの中で長く耐えられる者はいないんだから。」
「いっそ、何人かもっと送り込むのが良いのではありませんか?」
「それじゃ、一週間前に入った隊員を諦めるっていうのか?」
「一日程度でも大きな影響が・・・」
エイヴンが言葉を途切れさせる。
エドワードは、その誰も諦めるつもりはないようだった。
先に入った隊員に何が起こるかわからない状況であれば、なおさら慎重にならざるを得なかった。
「最低限の人数だけ残し、全員が一度に入るというのはどうでしょうか?」
「無謀すぎます。私だって中であまりに多くの人数を探すのは難しいでしょう。」
「・・・」
今回もマクシオンと他の人々が返答するまでには時間がかかった。
「条件を一つつけてもよろしいでしょうか?」
最初に口を開いたのはルイーゼだった。
「エドワードが一週間以内に出てこなかったら、そのときは本当に私が探しに入れるようにしてください。」
ルイーゼの言葉に、全員の表情がきりっと引き締まる。
彼らは固唾を飲み込みながらエドワードの返答を待っていた。
彼は苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「そのような約束は少し恐ろしいですね。」
「約束します。」
「最善を尽くします。しかし、一週間以内に私が出てこられなかった場合、そのときはマクシオンとエイヴンの指示に従ってください。ルイーゼさんが中に入るのは、たとえ脅迫であっても許されません。」
「エドワード。」
「ルイーゼ。」
マクシオンの呼びかけに、ルイーゼが視線を彼に向けた。
「きちんと約束しましたよね。」
「・・・わかりました。」
ルイーゼは静かに頭を下げた。
彼女を静かに見つめていたエドワードが表情を引き締めた。
「そしてもし、万が一私が建物の外に出てこられない場合、それは非常に危険であることを意味します。その場合、ルイーゼさんはこの場所を離れてください。」
「エドワード!」
「これはお願いではなく、この遠征の責任者としての命令です。」
「・・・」
ルイーゼは唇を固く閉ざし、エドワードをじっと見つめた。
彼は冷静な表情で言葉を続けた。
「今回の遠征中、ルイーゼさんが私のために被害を受けるようなことがあれば、私は彼女と同じ傷を受ける覚悟です。」
その発言に、全員が驚愕した。
彼らの話を黙って聞いていたロビンが、ルイーゼェの肩をつかんだ。
「だめだ、絶対だめ!」
「ルイーゼさんが自分の危険を顧みず、私を助けるために動くというなら、私も同じ方法で外に出るしかありません。でも、慎重に行動したほうがいいです。私はルイーゼさんを危険な場所に引き込もうと思って、この遠征に加えたのではありません。」
「・・・」
「どんなに危険であっても、私はあなたを守れると信じて行動しています。」
「私だって、自分の身くらい守る力はありますよ。」
「マクシオンも同じでした。物理的な力や技術だけでは防げない魔法もあるんです。」
ルイーゼが返事をできずに立ち尽くしていると、二人のやりとりを見守っていたマクシオンが深く息を吐き、口を開いた。
「ルイーゼ、ここにいる皆がエドワード様の代わりに駆けつけることができず、黙っているわけではない。」
マクシオンは心配そうな表情で彼らを見つめながら、団員たちを見回した。
「信じて待っているんだ。」
「・・・」
「だから、あなたも信じて。」
ルイーゼは静かに頷いた。
「・・・わかった。」
そう答えた彼女は再びエドワードを見た。
「そうします。」
視線が交わると、彼は険しかった表情を緩め、柔らかく微笑んだ。
「ありがとう。」
皆が心配そうな表情で見守る中、エドワードが建物の中へ入っていった。
そして、一週間が過ぎた。
「ベン! ベンが外に出てきました!」
エドワード以外の全ての団員が建物の外へ、まるで投げ出されたかのように出てきた。
ルイーゼは外に出てきた団員たちに駆け寄り、状態を確認した。
幸いにも、全員が怪我一つなく無事だった。
「エドワードは?」
「連絡が・・・」
団員たちは絶望的な表情で顔を伏せる。
「見つかりませんでした。」
「・・・嘘でしょ。皆が出てきたのに、なぜエドワードだけ出てこないの?」
「申し訳ありません。」
団員たちは沈痛な表情で答えた。
彼らは、自分たちが任務をしっかり果たせず、エドワードを危険に巻き込んだと自責しているようだった。
「期限をおっしゃったので、それまで待つことにしましょう。」
しかし、待ち望んでいた十日目になっても、エドワードは建物の外へ出てこなかった。
十日が過ぎた朝、マクシオンはルイーゼのテントを訪れる。
「ルイーゼ、行け。」
彼は重い表情でそう言った。
マクシオンが予想していたこととは違い、ルイーゼはほんの一瞬の迷いもなく、淡々と荷造りを始める。
荷物は多くなかった。
村を通り過ぎて少し回り道をすることをためらっていたが、後ろにあるペリルスの大きな屋敷はこの場所から遠くないため、たくさんの物を持ち出す必要はなさそうだった。
「問題が解決したら、必ず迎えに来る。」
「あなたが来るなんて、もう信じられない。」
ルイーゼは無表情な顔で言った。
「・・・怒っているのか?」
「長い間、ペリルスで私を待たせた挙句、こんな形で突き放そうとするなんて。首都でも、この場所でも。」
「君が傷つかないようにするためだよ。」
「じゃあ、あなたやエドワードが傷つくのは構わないっていうの?」
「・・・。」
「どうして二人は私のことを考えるふりをしながら、自分たちのことばかり考えているの?私の心配はどうでもいいの?すべてを失って一人ぼっちになったら、私は本当に幸せだと思う?また一人きりで待ち続けなければいけないの?」
「ルイーゼ。」
「マクシオン、それは私を思いやってるんじゃない。ただ、全ての状況について説明もなく、私に選択の余地を与えないってこと。」
「・・・ごめん。」
「謝る必要なんてないわ。もう何も期待しない。ただの自己満足な約束ごとだもの。」
ルイーゼの言葉に感情が高ぶった。
マクシオンが追いかけようと馬にまたがった瞬間、ルイーゼが素早く建物に向かって突進した。
彼もすぐに追おうとしたが、ためらうことなく駆けるルイーゼの速さには到底追いつけなかった。
「ルイーゼ!」
その大声は森の中に響き渡った。
しかし、ルイーゼは振り返ることなく、建物の正面を目指して走り続ける。
巨大な扉が目の前にそびえ、ルイーゼが中に入れる大きさだった。
「だから、私が行かなきゃいけないの。傷つかなければいいだけでしょ。」
彼女が建物の中へ足を踏み入れると、扉は音を立てて閉ざされた。